腫瘍マーカーの代表である、
- 膵臓がんや胆道がんで高値になることがあるCA19-9、
- 胃がんをはじめとする消化器癌、肺がん、乳がんで高値になることがあるCEA
ですが、陽性(高値)だからといって、すぐに癌があるとは限りません。
それぞれの詳しくはこちらで解説しました。
これらにもあるようにCA19-9やCEAは、良性病変でも上がることがあります。
良性病変なら安心ですが、そのためには精密検査をしてがんを否定する必要があります。
人間ドックなどでこれらの値に引っかかった場合、次にどんな精密検査を受けて、がんを探しに行き、がんを否定するのでしょうか?
まずは問診が重要!
診察の最初は問診です。
その点は、腫瘍マーカーが高値である場合ももちろん変わりありません。
特に、癌家系であるとか、何か既往歴があるとか、がんに関係することは漏れなく医師に伝えるようにしましょう。
以下に問診のポイントをまとめます。
症状はあるのか?
腹痛などの自覚症状があれば、すぐに伝えると思いますが、
- 食欲が低下している
- 体重が減少している
- 顔が黄色くなったといわれる(黄疸がある)
というのも立派な症状です。
これらをきちんと伝えるようにしましょう。
既往歴は?
がんの既往歴があれば、再発の可能性もあります。
また、膵がんは、糖尿病が悪化したり、急性膵炎で発症することもあります。
そのようなことがなかったのかをきちんと伝えましょう。
生活歴は?
喫煙歴、飲酒歴もがんのリスクになりますので、これらも偽らずに伝えることが重要です。
家族歴は?
癌家系であれば、がんの発症のリスクは上昇します。
またがんに限らず糖尿病家系であるかとうことも重要なポイントです。
診察されるポイントは?
問診が終われば、診察に移ります。
主に診察されるのは以下の箇所です。
- 目の診察:貧血、黄疸の有無をチェックするため
- リンパ節の診察:頸部や脇の下(腋窩)、鼠蹊部、左鎖骨窩(Virchowリンパ節)など。リンパ節転移の有無をチェックするため。
- 腹部の診察:触診で触れるような大きな腫瘤はないか、腹水はないか、押さえて痛みはないかなど。
診察する部位などは、医師によっても異なりますが、概ねこのようなところが診察されます。
検査は?
採血で、貧血、なかでも小球性貧血に分類される貧血を認めた場合、胃がんや大腸がんのリスクが高くなります。
また、膵がんの場合は、うまくインスリンを分泌できず、血糖値が上がるという耐糖能異常をきたすことがありますので、糖尿病の有無を採血でチェックすることも重要です。
また、膵がんの場合は、他の腫瘍マーカーも見ておきたいので、エラスターゼ、SPan-1、DUPAN-2などの腫瘍マーカーが追加で測定されることもあります。
画像検査は?
問診や診察で疑わしい部位があれば、そこにfocusを絞って画像診断されることもありますし、全身検索するために画像診断されることもあります。
腹部超音波検査
エコー検査とも呼ばれるもので、プローブをお腹に当てて検査をします。
X線も出ませんし、CTやMRIのような高価な画像撮影装置も必要ありません。
そのため、腹部のスクリーニングやがんを疑う場合は、まず最初に行われるべき画像検査とされています。
主に、肝臓、膵臓、胆嚢、脾臓、副腎、腎臓を見るのに用い、これらの異常を見つけるのには強い検査といえます。
胃がんや大腸がんが見つかることもありますが、消化管のがんには一般的に弱い検査と言えます。
バリウム検査・内視鏡検査
一方で胃や大腸といった消化管に強いのがこれらの検査です。ただし、同じ部位を検査するバリウム検査と内視鏡検査ですが、病気の発見率は後者が上です。
ですので、疑わしい場合や、よりがんの可能性を除外したい場合は、内視鏡検査の方がよいと言えます。
ただし、内視鏡検査もバリウム検査も負担が大きい検査でもあります。
より負担を少なくするのであれば、まずは便鮮血検査をして、その上で必要ならば、という形をとることもあります。
CT検査
全身のスクリーニング検査として用いられたり、がんが見つかった後に、どこかに転移がないかをチェックするのに用いられることが多い検査です。
造影剤を用いる場合と用いない場合がありますが、造影剤を用いたほうが、病気の発見率はより上がります。
特に、膵がんは小さなものが多く、造影CTでもはっきりしないこともあります。
そういった場合は、普段よりも薄いスライスで、さらにダイナミックCTといって、造影剤の動態を見ながら何度か撮影して、精査することもあります。
MRI検査
一方で、MRI検査の場合は、一度で撮影できる場所は狭いため、どこか怪しい箇所があればそこに絞って検査を行います。
CEAやCA19-9が高値で、お腹の臓器に腫瘍の可能性がある場合は、腹部のMRIや胆道系に強いMRCPといったMRI検査が撮影されることがあります。
CTで見つけられないようながんでもMRIならば見つかるということがあります。ただし、逆の場合もありますし、どちらがより優れているというのではなく、あくまで相補的にこれらの検査を用いることになります。
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その後は?
これらの検査を経て、がんが見つかれば、それに対する治療を行っていきます。
がんでなくても良性病変が見つかることもあり、それが原因で腫瘍マーカーが上がっていると結論付けることもあります。
ただし、いくら検査をしても見つからないという場合もあります。
そのまま経過観察して1-2ヶ月後に再検することもありますが、腫瘍マーカーが異常に高く、非常にがんが疑わしい場合は、FDG-PET検査などを行う場合もあります。
CEAは喫煙で上がることがありますので、禁煙を指導して、再度測定することもあります。
最後に
人間ドックなどで、CA19-9、CEAが陽性のとき、どんな精密検査をするのか、どのようにフォローしていくのかについてまとめました。
少し高いくらいでは、何も見つからないこともしばしばあります。
高値で引っかかった場合は、放置せずに、医療機関を受診するようにしましょう。
またもう一点大事なのは、その数値が以前はどうだったかということです。
同じ値でも、急激に増えているのと、変わらないのでは意味が全く異なります。
過去の検査の記録があれば、それも持参して受診するようにしましょう。