胃潰瘍に比べ、若い世代に起こりやすい十二指腸潰瘍。
症状がなく、たまたまおこなった胃カメラで発見されることもありますが、中にはみぞおちあたりが痛む症状で気づくことも多くあります。
そこで今回は十二指腸潰瘍(英語表記で「Duodenal ulcer」)について
- 症状
- 原因
- 検査
- 治療
など、胃潰瘍との違いも交えながらご説明します。
十二指腸潰瘍とは?
十二指腸潰瘍とは文字どおり、消化管である十二指腸にできた潰瘍(読み方は「かいよう」)のことです。
潰瘍とは、粘膜組織を越え、十二指腸の下層にまで組織欠損を起こしてしまったものです。
下のように、この組織欠損が粘膜筋層を越えない場合をびらん、越えるものを潰瘍としています。
UI-Ⅰはびらん、UI-Ⅱ〜UI-Ⅳを潰瘍と分類します。
胃潰瘍は40〜60代と高齢になる程増えますが、十二指腸潰瘍は20〜40代と比較的若い方にも起こります。
また、十二指腸は胃よりも粘膜下層が薄いため、潰瘍になると穿孔(読み方は「せんこう」意味は「穴があく」)しやすいといわれています。
十二指腸潰瘍の症状は?
無症状なこともありますが、以下のような症状があらわれることもあります。
- 心窩部痛
- 悪心
- 腹部膨満感
- 嘔吐
- 食欲不振
- 吐血
- 下血(タール便)
- 貧血
出血・穿孔・狭窄をきたすと、ショックや貧血、吐血や下血といった激しい症状が起こります。
胃潰瘍と十二指腸潰瘍の症状の違いは、
- 胃潰瘍は食後に症状が強く出る
- 十二指腸潰瘍は空腹時や夜間に症状が強く出る
という点です。
[adsense]
十二指腸潰瘍の原因は?
- ピロリ菌感染
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs「エヌセイド」)
- ストレス
- 喫煙
- 飲酒
- 刺激物
- 暴飲暴食
などが原因となります。
特にピロリ菌感染やNSAIDsは、2大病因といわれるほど十二指腸潰瘍の大きな原因となっています。
NSAIDsについて詳しくは、胃潰瘍の記事でご説明していますので、そちらをご覧ください。
元々粘膜は防御作用により、強い胃液などから守られています。
しかし上記のことが原因となり防御因子のバランスが崩れると、攻撃因子を防御しきれずに潰瘍を起こしてしまうというわけです。
十二指腸潰瘍の検査は?
- X線(バリウム造影検査)
- 内視鏡検査
症状と合わせ、以上の検査によって診断されます。
上部消化管造影検査(X線(バリウム造影検査))
活動期の潰瘍の場合、ニッシェと呼ばれる欠損部へのバリウムの溜まりが確認できます。
また、潰瘍部分に向かってひだが集中している様子が確認できます。
症例 70歳代 女性
内視鏡検査
胃潰瘍同様、活動期・治癒期・瘢痕期(はんこんき)に分類され、それぞれ特徴が異なります。
ステージ | 内視鏡所見 | ||
活動期 | A1 | 潰瘍の底に厚い苔があり、辺縁に炎症性腫脹がある。 | |
A2 | 潰瘍の底に白苔があり、浮腫は軽度になる。 | ||
治癒期 | H1 | 潰瘍は小さくなり、辺縁に発赤帯が見られ、粘膜ひだが集中する。 | |
H2 | 潰瘍は更に小さくなり、底は盛り上がり、薄い白苔で覆われている状態。 | ||
瘢痕期 | S1 | 白苔は消え、ひだが集中した中心に発赤が見られる。 | |
S2 | 発赤がなくなり、ひだの集中のみ確認できる。 |
(参考書籍:病気がみえるVol.1消化器・内科診断学 第2版)
症例:30歳代男性
十二指腸球部前壁に潰瘍あり。周囲粘膜は肥厚しています。活動性潰瘍から消化管穿孔を起こした症例です。
症例:28歳男性
10日前より心窩部痛を自覚。
(出典:医師国家試験107E52)
内視鏡を行い、十二指腸で白苔が確認できます。治癒期に相当すると考えられます。
[adsense]
十二指腸潰瘍の治療は?どんな薬が選択される?
治療は薬物療法によって行われますが、原因によって異なります。
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs「エヌセイド」)が原因の場合
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs「エヌセイド」)を服用し、それが原因となっていたかどうかで治療法が異なります。
NSAIDsが原因となっていたら服用を中止します。
また服用継続が必要な場合は、PPI(プロトポンプ阻害薬)もしくはPG製薬(プロスタグランジン)が選択されます。
NSAIDsが原因でない場合には、次にピロリ菌が原因となっていたかどうかを調べます。
ピロリ菌が原因の場合
ピロリ菌が見つかった場合は除菌が最優先されます。
それ以外が原因の場合
ピロリ菌以外の原因が考えられる場合には、薬物療法として
- H2RA(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)・・・胃酸分泌抑制薬(シメチジン・塩酸ラニチジンなど)
- PPI(プロトポンプ阻害薬)・・・胃酸分泌抑制薬(オメプラゾールなど)
- スクラルファート(ショ糖硫酸エステルアルミニウム塩)・・・粘膜保護薬(抗ペプシン薬)
が選択されます。
出血をきたしている場合
出血をきたしている場合には、直ちにショックを改善し、外科的治療がおこなわれます。
参考文献:婦人科・乳腺外科疾患ビジュアルブック P60〜63・参考文献:新 病態生理できった内科学 8 消化器疾患 P848〜850
最後に
- 粘膜組織を越え、十二指腸の下層にまで組織欠損を起こしてしまったもの
- 20〜40代といった若い世代に起こりやすい
- 胃潰瘍同様、心窩部痛や腹部膨満感などといった症状が出る
- 出血すると、ショックや吐血・下血などといった激しい症状が出る
- 空腹時や夜間に強く症状が出る
- ピロリ菌やNSAIDsやストレスなどの原因がある
- X線バリウム造影検査や内視鏡検査で診断される
- 原因によって治療法が異なる
治療によって潰瘍が改善されても、薬の効果を持続させるためにも、生活習慣の改善をおこない規則正しい生活を行うことが大切です。
不規則な生活、不摂生は再発にもつながりますので、自分自身で気をつけることが大切です。