肺炎は発症した時点のその人の生活状況により、
- 市中肺炎
- 医療・介護関連肺炎
- 院内肺炎
の3つに分類されます。
市中肺炎とは、健常な人がかかる肺炎のことです。詳しくはこちらの記事を参照してください。→市中肺炎とは?原因菌・ガイドラインにおける重症度分類は?
一方で、院内肺炎とは字のごとく病院内で入院の方に発症する肺炎のことです。
- どのような菌が原因となるのか?
- なぜ市中肺炎などと分けられているのか?
- 市中肺炎との違いは何なのか?
など気になります。そこで今回は院内肺炎についてまとめました。
院内肺炎とは?定義は?
- 院内肺炎とは、入院して48時間以降に新しく発症した肺炎。
と定義されています。48時間以前に発症した肺炎は入院より前に感染した可能性があるということで含まれないわけです。
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院内肺炎の起炎菌・原因菌は?
- 黄色ブドウ球菌、MRSA
- 緑膿菌
- クレブシエラ
- 真菌
市中肺炎と比べて、MRSAなど耐性菌が原因となることが多いとされます。
院内肺炎と市中肺炎の違いは?
院内肺炎は入院中の方に発症した肺炎であり、もともと基礎疾患があり、免疫状態が低下した人に発症した肺炎であるため重症化しやすいというのが特徴です。
そこで、日本のガイドラインでは市中肺炎における重症度分類と院内肺炎における重症度分類を分けるシステムを導入しています。
市中肺炎の重症度分類には、A-DROPシステムを用いますが、院内肺炎においては、I-ROADシステムを用います。
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院内肺炎の重症度分類(I-ROAD)とは?
2段階で重症度を判定します。
まず生命予後予測因子として以下の5項目を評価します。
- 免疫不全状態(悪性腫瘍もしくは免疫不全):Immunodeficiency
- 呼吸状態(SpO2>90%を維持するためにFiO2>35%を要する):Respiration
- 意識の状態(意識レベルの低下):Orientation
- 年齢(男性なら70歳以上、女性なら75歳以上)
- 脱水(乏尿あるいは脱水):Dehydration
これらのアルファベットの大文字をとってI-ROADです。
そしてこの
- 5項目のうち3項目以上が該当→重症群(C群)
へと2段階を評価せずに分類されます。
そして5項目中該当が2項目以下の場合は、2段階目の評価として肺炎重症度規定因子とし以下の2項目を評価します。
- CRP>20mg/dl
- 胸部X線写真陰影の広がりが1側肺の2/3以上
そして、
- いずれも該当がない。→軽症群(A群)
- 該当がある。→中等症群(B群)
と分類します。
重症度分類と予後(死亡率)の関係は?
この
- 軽症群:死亡率12.1%
- 中等症群:死亡率24.9%
- 重症群:死亡率40.8%
と報告されており、重症度と死亡率に明確な相関があるからですね。
院内肺炎の治療薬は?
推奨薬剤は以下の通りです。
- 抗緑膿菌セフェム:モダシン1g、マキシピーム1g、ファーストシン1g、ケイテン1g、スルペラゾン1gそれぞれ1日2~3回。
- カルバペネム:メロペン0.5g、チエナム0.5g、オメガシン0.3gそれぞれ1日2~3回(カルベニンは緑膿菌に強くない)。
- アミノグリコシド:硫酸アミカシン15mg/kg*、エクサシン8(~15*)mg/kgそれぞれ1日1回。
- ニューキノロン:シプロキサン300mg、パズクロス500mg1日2回。
まとめ
- 院内肺炎は入院後48時間以降に発症した肺炎。
- 基礎疾患がある人にかかる肺炎であるため重症化することが多い。
- そのため、院内肺炎独自の重症度分類I-ROADを適応する。
- I-ROADは予後と相関関係にある。
参考)日本呼吸器学会呼吸器感染症に関するガイドライン作成委員会:成人院内肺炎診療ガイドライン.日本呼吸器学会,2008