クラミジア(クラミドフィラ)は偏性細胞内寄生体と呼ばれ、細胞内のみで増殖する細菌の一種です。そしてクラミジアに感染すると肺炎を起こすことがあります。肺炎では非定型肺炎に分類されます。
非定型肺炎についてはこちらにまとめています。→非定型肺炎とは?細菌性肺炎との違いは?診断から治療まで!
今回はこのクラミジア(クラミドフィラ)肺炎についてまとめました。
クラミジア(クラミドフィラ)肺炎の原因は?
クラミジア(クラミドフィラ)肺炎を引き起こす病原体としては2種類が知られています。ともにクラミドフィラ属に分類されている以下の2種類です。
- Chlamydophila psittaci(クラミドフィラ シッタシ):オウム病の原因となる。
- Chlamydophila pneumoniae(クラミドフィラ ニューモニエ):肺炎クラミドフィラ(クラミジア)の原因となる。
それぞれ、感染経路が異なります。
起こす疾患 | 感染経路 | |
Chlamydophila psittaci | オウム病 | 飛沫による経気道感染 |
Chlamydophila pneumoniae | 肺炎クラミドフィラ | トリの菌が付着したホコリを吸入。 |
[adsense]
肺炎クラミドフィラ(Chlamydophila pneumoniae感染症)とは?特徴は?
こちらは上に述べたように、人から人へと飛沫による経気道で感染します。健常人にかかる肺炎である市中肺炎のうち実に1割を占め、頻度は比較的高いと言えます。
小児や高齢者に多いとされ、飛沫感染するため、集団発生も報告されています。つまり肺炎クラミドフィラは人から人へとうつるということです。
オウム病と異なり一般細菌との混合感染が見られることがあるのが特徴です。またこれに感染することにより、慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)が急性増悪することがあります。
肺炎クラミドフィラの症状は?
症状は
- 乾性咳嗽が続く。
- 軽度発熱
と非特異的です。小児では熱がないこともありますし、成人では無症状の場合もしばしばあります。無症状ですので、感染しても成人の場合は気づかないこともあります。成人の5-6割は既感染者であると言われています。
風邪程度の症状にとどまることが多いとされ、肺炎は軽症なことが多いです。ただし、遷延する咳嗽が特徴です。
また、肺炎クラミドフィラの慢性感染が冠動脈疾患発症のリスクファクターとなると言われています。
肺炎クラミドフィラの診断は?
診断には、
- ELISA法やMIF法による血清抗体価測定
- 補体結合反応
- PCR法
が有効とされています。オウム病以外のクラミジア肺炎は、5類感染症定点把握疾患に指定されています。
レントゲンやCTの画像診断では、気道に沿った気管支肺炎/感染性細気管支炎のパターンが比較的頻度が高いとされますが、肺胞性肺炎のパターンを呈することもあり、画像だけでは鑑別は困難とされます。
クラミドフィラはこの図のように、中枢側の気管支から末梢の肺胞まで広範に好んで生息するため、様々な画像所見を呈すると同時に、中枢側の気管支に感染することにより、咳が強く、遷延する原因となります。
関連記事)マイコプラズマ肺炎まとめ!症状から、診断、治療まで。
オウム病(Chlamydophila psittaci感染症)とは?特徴は?
文字通りオウムやインコなどの鳥類から感染します。これらの排泄物が乾燥し、それを吸引することにより感染すると考えられています。
また鳥へ口移しで人が餌をあげても感染することがあります。
オウム病の症状は?
症状は
- 乾性咳嗽
- 発熱
- 頭痛
とこちらも非特異的です。やはり、鳥類の飼育歴が重要です。
ただし、重症化することがあり、
- 多臓器不全
- 髄膜炎
- DIC
から死に至ることもある恐ろしい病気です。その理由は血行性に全身に行き渡るためと言われています。
オウム病の診断は?
診断には、
- MIF法による血清抗体価測定
- PCR法
が有効とされています。
オウム病は、4類感染症であり、診断した医師は直ちに保健所への届出が必要とされています。
レントゲンやCTの画像診断では、すりガラス影〜網状影を示すとされており、重症例ではコンソリデーションを来すとされますが、他の肺炎との画像での鑑別は困難です。
クラミジア肺炎の治療は?
治療はともに、テトラサイクリン系抗生物質、マクロライド系抗生物質、ニューキノロン系抗生物質を使用します。
一般細菌感染症よりも長期間である10-14日程度投与されることが多いです。
合併症の無い若年者の処方例
クラリス(200)2錠分2 14日間またはミノマイシン100mg×2点滴もしくは100mg2錠分2後14日間
もしくはジスロマック(250)2錠朝後3日間
※膿性痰があれば肺炎球菌を考慮してケテック(300)2錠分1朝後7日間。
合併症のある人や高齢者の処方例
- 外来:ガチフロ(100)4錠分1朝後*、クラビット(100)4~5錠分1朝後、ケテック(300)2錠分1朝後。
- 入院中等症まで:(ユナシンS3g×2 or ロセフィン1~2g×1)+(クラリス(200)2錠分2 or ジスロマック(250)2錠朝後3日間 or ミノマイシン100mg×2点滴)
- 入院重症:(第4世代セフェム or カルバペネム)+(ミノマイシン or ニューキノロン)
第4世代セフェム:ファーストシン1g 、マキシピーム1g 、ケイテン1gそれぞれ1日2~3回。
カルバペネム:チエナム0.5g、メロペン0.5g、オメガシン0.3g、カルベニン0.5gそれぞれ1日2~3回。
ニューキノロン:シプロキサン300mg、パズクロス500mg。それぞれ1日2回。
最後に
クラミジアには複数の種類がありますが、肺炎を起こすのは基本的に2種類です。今回はその2種類についてまとめました。
クラミジア肺炎は非定型肺炎に分類され、一般的な細菌性肺炎とは異なる臨床上や画像所見をとります。特にオウム病ではオウムなどの鳥類の飼育歴が重要なポイントになりますので、その旨をきちんと医師に伝えるようにしましょう。