両側の腎臓の上には副腎(ふくじん)という複数のホルモンを作る臓器があります。
この副腎は非常に血流に富んだ臓器であり、そのため出血をきたすことがあり、副腎出血と言います。副腎出血は新生児に多い病態で、新生児期の副腎腫瘤で最も多いものです。
ただし、新生児期だけではなく、成人に起こることもあります。
両側に起こった副腎出血は急性副腎不全の原因となるため、非常に重要な病態です。
今回はこの副腎出血について、原因(成人と新生児に分けて)、症状、診断方法についてまとめました。
副腎出血の原因は?
副腎が出血を起こす原因はまず大きく2つに分けられます。
- 非腫瘍性の副腎出血
- 腫瘍が原因となる副腎出血
の2つです。
頻度としては非腫瘍が8割、腫瘍性が2割と言われています。
非腫瘍性の副腎出血の原因は?
成人の場合
非腫瘍性では、成人の場合、
- ストレス(火傷、手術、妊娠、外傷、心血管疾患など)
- 副腎皮質刺激ホルモンの投与
- 抗凝固療法
などが挙げられます。そしてこの非腫瘍性の副腎出血のほとんどは両側に起こります。
ただし外傷による副腎出血は片側性であり、かつ右に80%と多いと言われています。これは、右副腎静脈は直接下大静脈に還流するため、外傷を受けた際のクッションの役割を果たす臓器が少ないからと言われています。
新生児の場合
新生児において副腎出血は比較的頻度が高い疾患で、原因としては、
- 胎生期のストレス
- 分娩時の外傷
- 低酸素血症
- 敗血症(Waterhouse-Friderichsen症候群)
- 出血性疾患
などが挙げられます。
また母体に糖尿病があると新生児の副腎出血のリスクは上がると言われています。
新生児の場合、副腎出血の両側性の割合は10%程度と少なく、片側性が多いと言われています。また左右差は右が左より多いと言われています。
腫瘍性の副腎出血の原因は?
腫瘍性では、
- 褐色細胞腫(最多)
- 副腎がん
- 骨髄脂肪腫
- 副腎転移
- 副腎腺腫
などが原因となります。この場合は、ほとんどは片側性ですが、転移の場合は両側の頻度が上がります。
副腎出血の症状は?
症状としては出血を起こした側の腰痛が起こることが通常です。
ただし、両側性に副腎出血を起こすと急性副腎不全(副腎クリーゼ)と呼ばれる病態になることがあり、この病態になると
- 急速に進行する低血糖及びそれに伴う意識障害
- 血圧低下
- 悪心・嘔吐
- 下痢
などの症状をきたします。
副腎出血の診断方法は?
他の腹部の臓器を評価するのと同様に第一選択は超音波検査です。
副腎出血は超音波検査において、最初は高エコー像として描出されますが、時間が経つと低エコーとなり小さくなり、吸収値は水に近くなり、最終的にはほとんど完全に吸収されます。
新生児の場合、最も重要な鑑別診断として、先天性神経芽腫が挙げられます。
また腹部CT検査も副腎出血の診断には、重要な検査です。急性期は副腎出血は高吸収として認められ、時間が経つにつれて低吸収に置き換わっていきます。ただし、被曝の問題があるため、第一選択にはなりません。
最後に
副腎は入ってくる血管が多い割に、出て行く血管が少なく、vascular damと呼ばれる臓器であり、血流が豊富な臓器です。そのため、出血しやすい臓器だと言えます。
突然の腰痛や、副腎クリーゼ症状をきたした場合に鑑別に入れないといけない疾患と言えます。