【保存版】肝嚢胞とは?原因、画像、症状、治療の徹底まとめ!

肝臓の病気


Liver cyst Eye-catching image

人間ドックや健康診断の画像検査、特に

  • 腹部エコー検査(超音波検査)
  • 腹部CT検査
  • 腹部MRI検査

において、かなりの頻度で指摘されるのが肝臓にできる肝嚢胞(読み方は「かんのうほう」、英語ではhepatic cyst(liver cyst))です。

  • 「肝嚢胞あり」
  • 「肝嚢胞を複数認めます。」
  • 「肝嚢胞が散見されます。」

などと画像の検査では報告されます。

この肝嚢胞は、ほとんどは無症状で、経過観察の必要もないものですが、稀に症状を起こすことがあります。

そこで今回はこの肝嚢胞について、疫学から、原因、症状、画像診断、治療について、実際のCTやMRI画像やイラストを交えながらまとめました。

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肝嚢胞とは?

hepatic-cyst

肝嚢胞とは、簡単に言うと、肝嚢胞とは、肝臓内の「水たまり」のことです。

限局性の肝臓病変で海綿状血管腫に次いで2番目に多く認める良性腫瘤です。

境界が明瞭な円形〜類円形の病変で、内容物は漿液性の液体貯留であり、均一な水の濃度を示します。

被膜も1mm以下と薄く、多くは単房性です。嚢胞を1つ〜複数個だけ認める孤立性(simple cyst,solitary cyst)と、10個以上存在する多数存在する多発性に分けられます。

40代から50代以降の女性(女性が男性の4−5倍多い)によく見られ、小児での発生は稀です。

サイズは大きいものでは直径20cmに及ぶことがあります。

胆管内皮から発生すると考えられており、肝臓の実質に向かって、上皮層、線維性被膜、血管が豊富な間質層から構成されています。

まれに寄生虫性のものや腎臓、膵臓、肝臓に多発する多嚢胞腎(polycystic kidney disease)があります。

多嚢胞腎(polycystic kidney disease)とは?

若年型と成人型に分類されますが、成人型は常染色体優性遺伝をする先天性疾患で、常染色体優性嚢胞腎(autosomal-dominant polycystic kidney disease:ADPK)と呼ばれます。

この場合、腎臓以外にも、肝臓(polycystic liver)、膵臓、脾臓、卵巣に嚢胞を伴います。

adpk

肝臓に嚢胞を認める頻度は25-33%、逆に多発する肝嚢胞を認める人のうち約50%にこの疾患があると報告されています。

肝臓の嚢胞は、通常の肝嚢胞と比べて大小様々な嚢胞が肝臓にびまん性に多数認められるのが特徴です。

肝機能はほとんどの場合正常であると言われますが、進行すると肝腫大、肝不全、Budd-Chiari症候群をきたすことがあります。

多発する孤立性肝嚢胞との鑑別は困難ですが、後で説明する複雑性嚢胞を含む割合は、常染色体優性嚢胞腎で認める肝嚢胞に多いと報告されています。

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肝嚢胞はなぜできる?原因は?

肝嚢胞はなぜできるのでしょうか?

生まれつきから存在する先天性が最も多いのですが、それ以外にも

  • 外傷
  • 炎症
  • 腫瘍

により後天的に発生することもあります。

ただし、これらの場合でも基本的に臨床的に問題になることはなく、通常は経過観察も必要ありません。

肝嚢胞の症状は?

肝嚢胞は、通常無症状であり、臨床的に問題になることはほとんどありません。

huge-hepatic-cyst-001

ただし、サイズが大きい肝嚢胞は時として

  • 腹部腫瘤
  • 腹部膨満感
  • 食欲不振
  • 腹痛
  • 嘔気・嘔吐
  • 労作時呼吸困難(右横隔膜挙上による)
  • 黄疸(嚢胞による胆管の圧排)

の症状をきたすことがあります。

肝嚢胞の鑑別は?嚢胞性腫瘍とは?

稀ですが、肝嚢胞の鑑別には以下のような疾患が挙げられます。

  • 総胆管嚢胞
  • 胆汁漏胆汁腫(biloma)
  • 肝膿瘍
  • 出血・壊死性転移(卵巣癌、食道癌、カルチノイド腫瘍、平滑筋肉腫など)
  • 寄生虫性嚢胞
  • 肝嚢胞性腺腫、嚢胞性腺癌

非常に稀ではありますが、肝嚢胞として経過を見ていた場合に嚢胞腺腫から嚢胞腺癌へと変化したという報告があります。

嚢胞の壁に限局的な壁肥厚や充実部位を疑うような所見、隔壁を有する場合、内容物の異常(血性、細胞成分など)を認めた場合は、癌の可能性があります。

肝嚢胞のエコー、CT、MRI画像所見は?

肝嚢胞は、画像検査で発見されますが、その画像検査には

  • 腹部エコー検査
  • 腹部CT検査
  • 腹部MRI検査

があります。

エコー

肝嚢胞は腹部エコー検査では、辺縁が明瞭で内部は無エコーとなります。

また特徴的な所見として、後方に音響増強(後方エコー増強)が見られます。

非常に小さな嚢胞では後方に音響増強(後方エコー増強)のみが認められます。

ただし、嚢胞の内部に隔壁を有したり、嚢胞が分葉状の構造を示すこともあります。

症例 40歳代男性 スクリーニング

hepatic-cyst-001

肝臓右葉に辺縁が明瞭で内部は無エコー(真っ黒)の腫瘤を認めています。そして、その嚢胞の後ろは白いことがわかります。これが、後方エコーの増強です。典型的な肝嚢胞の所見です。

CT

肝嚢胞は内部が水と同程度の濃度を示し、CT値を測定すると-10~10HU程度です。

造影剤を使った検査では嚢胞には造影効果は認めません。

症例 40歳代男性 スクリーニング(エコーと同一症例)

hepatic-cyst-002

肝両葉に境界明瞭で均一なLDA(低吸収領域)を認めています。嚢胞の所見です。上のエコーでは小さい方の肝嚢胞を見ていました。

症例 80歳代女性 腹部膨満

hepatic-cyst-003 doc2

肝右葉に長径18cm大の巨大嚢胞を認めています。腹部膨満の原因と考えられた症例です。

MRI所見

内容部は漿液性の液体貯留であるので、T1強調像で低信号、T2強調画像で極めて明瞭な高信号を示します。T2強調像の中でも、水を強調するheavy T2画像が有用です。

また、CT同様造影剤を使った造影MRI検査で嚢胞には造影効果は認めません。

ただし、小さな嚢胞は、部分容積効果によりT2信号がやや淡いことがあり、腫瘍との鑑別が難しい場合もあります。

症例 80歳代 女性

hepatic-cyst-001

肝右葉にT1強調像で低信号、T2強調像で著明な高信号を示す嚢胞あり。

複雑性嚢胞とは?

また、内部が漿液性の液体成分でない場合、複雑性嚢胞(complicated cyst)と言って、内部に

  • タンパク濃度の高い液貯留
  • 出血成分

を伴う場合があります。この場合は、T1強調像で等信号〜高信号、T2強調像で高信号〜等信号を示す場合もあります。

症例 80歳代 男性

complicated-hepatic-cyst-001

肝臓の右葉に巨大嚢胞を認めています。T1強調像で高信号を示す点が非典型的であり、内部に出血を認める出血性嚢胞(複雑性嚢胞)の症例です。

前腸性嚢胞とは?

複雑性嚢胞と同様に典型的な肝嚢胞の画像パターンにならないものに、前腸性嚢胞(ciliated hepatic foregut cyst)があります。

これは、肝臓の解剖のS4の部位に生じて、T1強調像で肝臓よりもやや高信号を示すのが特徴です。(T2強調像では著明な高信号を示すので、腫瘍などとは鑑別が可能です。)

症例 70歳代 男性

ciliated-hepatic-foregut-cyst doc2

肝臓S4の辺縁に嚢胞としてはやや高吸収(白い)な嚢胞あり。部位と嚢胞の濃度から前腸性嚢胞が疑われます。

なお肝内胆管の拡張を認めています。

肝嚢胞は破裂することがある?

肝嚢胞はサイズが大きくなると破裂することがあります。

その原因は

  • 外傷
  • 嚢胞の感染
  • 医原性
  • 自然破裂

が報告されています。

破裂した場合は緊急手術となることが多いですが、破裂した先が肝臓内ならば保存的に経過観察されることもあります。

破裂した先が腹腔内である場合、内容物が漿液性の液体ならば保存的にも加療されることもありますが、感染を伴っている嚢胞や出血を伴っている場合は、腹膜炎を起こすことがありますので、手術が行われることが一般です。

肝嚢胞は感染することがある?

肝嚢胞に感染を伴うことがあり、

  • 腹痛
  • 発熱

といった症状で発症します。この場合は嚢胞の壁が厚くなったり、内部の濃度が複雑性嚢胞と同様に、CT値が上昇したり、MRIのパターンが通常の嚢胞ではなくなることがあります。

また造影剤を使った検査で、嚢胞壁に造影効果を認めるようになります。

症例 80歳代 女性 発熱

infection-hepatic-cyst-001

ダイナミックCTで矢印で示した嚢胞は壁が厚く、周囲肝臓実質に造影効果を認めています。感染性嚢胞が疑われます。

肝嚢胞の治療は?治療適応は?

治療法には、内科的治療と外科的治療に大きく分けられます。

内科的治療

サイズが大きくて症状がある場合は治療の対象となります。

肝嚢胞の内科的治療には以下のような治療法があります。

  • 穿刺吸引
  • エタノール注入
穿刺吸引

多くはエコー(超音波)を見ながら皮膚から針を刺して(穿刺)、吸引します。

腹腔鏡下に穿刺吸引されることもあります。

ただし、再発したり、再度大きくなることがあります。

エタノール注入

通常サイズが5cm以上で、症状がある場合に適応になります。

こちらもエコーを見ながら、嚢胞を穿刺吸引します。その後、エタノールの注入を行います。

注入後は体位を変えて、嚢胞の壁全体にエタノールが接触するようにします。

その後、エタノールを全量吸引して排出します。さらに嚢胞内を洗浄します。

エタノールが有効なのは上皮と接すると数分で凝固壊死を生じるためと報告されています。

またエタノールの代わりにミノサイクリン、パントペークなどの注入も行われることがありますが、これらは再発率が高いか毒性が高いため、エタノールが第一選択とされます(臨床放射線 vol.53 No.12 2008)。

外科的治療(手術)

外科的治療すなわち手術の適応としては、悪性の疑いがある場合や胆道系と交通がある場合です。

手術には以下のものがあります。

  • 肝嚢胞切除術
  • 肝葉切除術
  • 嚢胞壁切除術
  • 連続的開窓術(多発肝嚢胞に対して行なわれます。)

根治的治療として、嚢胞そのものだけを切除する肝嚢胞切除術や、嚢胞が存在する肝臓の葉ごと切除する肝葉切除術があります。

手術の侵襲を少なくするために、嚢胞壁切除術が行われることもあります。ただし、悪性の可能性がある場合は、嚢胞そのものの切除が行なわれます。

最後に

肝嚢胞について、疫学から、原因、症状、画像診断、治療についてまとめました。

  • 肝臓の嚢胞はほとんどが良性で経過観察の必要もない。
  • サイズが大きいものは症状を示すことが稀にある。
  • サイズが大きく症状がある場合は治療の対象となる。
  • 悪性の可能性がある場合は外科的治療の対象となる。

 

という点がポイントです。

多くは単純性の肝嚢胞で経過観察の必要もありませんので、画像検査で肝嚢胞があると指摘されても深刻に受け止める必要はありません。

逆に、稀ですが悪性の可能性がある場合や、感染の可能性がある場合は、経過観察が必要です。

 

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