脳MRIの慢性虚血性変化とは

脳ドックなどで脳のMRI検査を受けると、

  • 「大脳に慢性虚血性変化があります。」
  • 「大脳に大脳白質病変があります。」
  • 「大脳にleukoaraiosisがあります。」
  • 「大脳に加齢性変化があります。」

などと記載されることがあります。少しずつニュアンスは異なりますが、概ね表現しようとしていることは基本的に同じなのです。

最もよく使われるこの慢性虚血性変化というのはどういったものなのか、正常なのか、それとも病的な意味がある異常なものなのか?脳ドックガイドライン2014も参照にしながら、オリジナルイラストを用いてまとめてみました。

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慢性虚血性変化とは?原因は?

大脳は灰白質と白質に分けることができ、このうちより表面の皮質が灰白質であり、深部にあるのが白質です。

さらに白質は部位により、

  • 皮質下白質
  • 深部皮質下白質
  • 脳室周囲白質

と呼ばれます。うち後者2つを図解すると下のようになります。

leukoaraiosis

そして主にこの2つの部位に、起こる病変を大脳白質病変と言います。

この大脳白質病変ですが、病理学的には髄鞘の希薄化を意味しており、

  • 高血圧(最多)
  • 加齢
  • 慢性虚血
  • 糖尿病
  • 心房細動

などが原因として関与していると言われていますが、実は正確なことはわかっていません。

ですので、慢性虚血性変化という表現は必ずしも正しい表現ではない(大脳白質病変の原因は様々であり、正確なことはわかっていないため)のですが、慣例的にこの言い方が使われることがあります。

つまり、慢性虚血性変化とは大脳白質病変を表しており、英語ではleukoaraiosisも同じことです(leuko 白質、araiosis 粗化)。

厳密な意味は異なりますが、

大脳白質病変=leukoaraiosis ≒ 慢性虚血性変化 ≒ 加齢性変化

といずれも主にMRIにおける大脳白質病変に対して使われることがあります。

医師
つまり、厳密には慢性虚血性変化というのは大脳白質病変の原因の一部に過ぎないということです。

しかし、人間ドックなどのレポートに書かれる場合は、いずれも大脳白質の変化を意味します。

慢性虚血性変化はMRIでどのように見える?

慢性虚血性変化、正確には大脳白質病変はMRIでは、特に

  • T2強調像
  • FLAIR像

という撮像方法でこの変化を捉えることができます。

例として、FLAIR像でこの大脳白質病変をイラストしてみますと次のようになります。

leukoaraiosis1

このようにFLAIR像やT2強調像において、高信号(白く)になるのがこの大脳白質病変の特徴です。

つまり、脳ドックなどでは、こう言った所見を見て、医師は

  • 大脳白質病変(leukoaraiosis)があります。
  • 慢性虚血性変化があります。
  • 加齢性変化があります。

などとレポートをしているということです。

関連記事)脳ドックを受ければ何がわかるのか?こちらにまとめました。→脳ドックの検査内容は?何がわかるの?

慢性虚血性変化は正常範囲?症状は?

慢性虚血性変化と表現される大脳白質病変ですが、一般的には無症状であることが多いのですが、程度が強くなると、

  • 認知機能低下(認知症)
  • 下肢機能低下

と言った症状が出てくることがあり、注意が必要です。

また、大脳白質病変の程度が強い場合は、内部に小さな梗塞が混在している場合があり、画像ではこれらの区別がつきにくい場合があります。

つまり、一概に大脳白質病変、慢性虚血性変化といっても、下のイラストのように、実はその程度に差があればリスクにも差があるということです。

leukoaraiosis2

実際、65歳以上の高齢者を対象に行われた研究では、この大脳白質病変が著明に見られた場合、自立状態から3年後には要介護状態に移行するリスクが2倍になったという報告があります(Cerebrovasc Dis,32:577-588,2011)

またこの研究では、大脳白質病変が

  • 認知障害
  • 運動障害
  • うつ病
  • 心血管系疾患
  • 排尿障害
  • 他の脳病変:ラクナ梗塞、脳萎縮など

といった症状と関与していることが明らかになりました。

つまり、同じ大脳白質病変であっても、程度が強い場合は注意が必要だということです。

医師
そこで、この大脳白質病変を分類することが脳ドックガイドラインでも記載されています。

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慢性虚血性変化(大脳白質病変)のグレード分類とは?

上で述べたように、大脳白質病変は、

  • 深部皮質下白質病変
  • 脳室周囲白質病変

に大きく分けることができ、これらの程度によりそれぞれグレード分類されています。ただし、最終的にはどちらも著明となり区別ができなくなります。

ここでは、視覚的におおまかな程度の違いをチェックしてください。

深部皮質下白質病変(DSWMH)のグレード分類

leukoaraiosis5

  • グレード0:なし
  • グレード1:直径3 mm未満の点状病変,または拡大血管周囲腔
  • グレード2:3 mm以上の斑状で散在性の皮質下~深部白質の病変
  • グレード3:境界不鮮明な融合傾向を示す皮質下~深部白質の病変
  • グレード4:融合して白質の大部分に広く分布する病変
    (Shinoharaら 2007 (一部改変))

このようにグレード分類されます。

脳室周囲よりも深部皮質下白質の高信号がグレードが上がるごとに大きくなっているのがわかります。

医師
深部皮質下白質病変(DSWMH)が目立つ症例を見てみましょう。

症例 70歳代女性 スクリーニング

dswmh-grade2

深部皮質下白質にやや癒合傾向の高信号が散見されます。
グレード分類2相当です。

この症例を動画でチェックする。

側脳室周囲病変(PVH)のグレード分類

leukoaraiosis6

  • グレード0:なし,または”periventricular rim” のみ
  • グレードⅠ:“periventricular cap” のような限局性病変
  • グレードⅡ:脳室周囲全域にやや厚く拡がる病変
  • グレードⅢ:深部白質にまでおよぶ不規則な病変
  • グレードⅣ:深部~皮質下白質にまでおよぶ広汎な病変
    (Shinoharaら 2007 (一部改変))

このようにグレード分類されます。

深部皮質下白質よりも脳室周囲の脳室を縁取るような高信号がグレードが上がるごとに大きくなっているのがわかります。

医師
では実際の画像を見てみましょう。
症例 70歳代 男性

pvh-grade2

FLAIR像で、両側側脳室周囲に優位に高信号を認めています。
深部皮質下白質病変も一部認めています。

グレードⅢ相当と考えられます。

症例 80歳代 男性

pvh-grade4

FLAIR像で、深部皮質下白質〜脳室周囲白質に広範な高信号を認めています。

深部皮質下白質病変(DSWMH)も側脳室周囲病変(PVH)もいずれも最終的にはグレードⅣとなり深部皮質下白質〜脳室周囲白質に及びます。

こちらの症例を動画でチェックする。

関連記事)脳ドックなどで指摘されることがある正常変異→ベルガ腔(Verga腔)とは?透明中隔腔、脳室間腔とは?症状は?

最後に

慢性虚血性変化、大脳白質病変についてまとめました。

一概に大脳白質病変や慢性虚血性変化といっても、その程度の違いでリスクが全く異なるということが重要です。

MRI画像での程度が強い場合や、症状がある場合などは、血圧の管理など加療の対象となります。

そのためには、

  • 大脳白質病変は、どの部位にどの程度存在するのか。
  • 去年の画像があればそれと比較してどうなのか

を確認することが重要です。

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