アルファベットが似ていて非常にややこしい医療用語のENBDとERBD!
どっちがどっちで何を意味するのだったか、つい忘れてしまいますよね。
「ENBDとは?」
「ERBDとは?」
「ENBDとERBDの違いは?目的は?」
「ENBDやERBDの合併症は?看護で注意すべきポイントは?」
様々な疑問が生まれてきます。
そこで今回は、ENBDとERBDそれぞれが何を意味し、何を目的に行う手技なのかなどをイラストを用いて、さらには動画を用いて具体的に解説します。

ENBDとは?ERBDとは?EBDとは?その目的は?

ともに根本は、内視鏡を用いた胆汁の排泄(内視鏡的胆道ドレナージ術)を意味します。
まずはこちらの動画をご覧ください。

その上で記事を読んでいただくことで理解がさらに深まります!
通常、胆汁は下のような流れで、肝臓から、胆管を経て、十二指腸へと排泄されます。

ところが、この流れの途中で石や腫瘍などができてしまうと、流れがうまくいかずに胆汁が鬱滞してしまいます。
この状態を閉塞性黄疸と言います。

閉塞性黄疸になると、胆汁が腸管に移行しないため、ウロビリノゲンの生成量が減り、また脂肪吸収が障害されます。
そこに仮に感染を起こすと、胆管炎を引き起こし命に関わることもあります。
そうならないためにも、胆汁をうまく外に排泄する必要があります。
胆汁を外に出すには、主に2つの方法があります。

  • 内視鏡(胃カメラ)を用いて、胆管の開口部である十二指腸乳頭部からアプローチする方法(EBD)
  • 皮膚から肝臓を経由して(串刺しにして)、胆道へアプローチする方法(PTCD

の2つです。
今では通常は内視鏡を用いた方法が第一選択となります。
この方法は、内視鏡を用いて胆汁を排出するので、内視鏡的胆道ドレナージ術(EBD:endoscopic biliary dranage)といいます。
そして、このEBDには、ENBDと、ERBDに分けられるということです。
つまり、

  • ENBDとERBDはともに内視鏡を用いて、胆汁を排泄するために行う手技

のことです。

ENBDとERBDの細かいところはこのあと説明します。
ここではともに目的は同じで、胆汁を排泄する手技であるということを押さえておきましょう。

ERCPとは?

ちなみに内視鏡を用いて、胆道を造影する検査を、ERCP(endoscopic retrograde cholangiopancreatography)=内視鏡的逆行性胆管膵管造影と言います。
ERCPというのは、造影検査のことで、造影することで胆道の状態を把握します。
ERCPについてはこちらに詳しく解説しています。→【まとめ】ERCPとは?検査の手順や合併症について
下のように、胆管の狭窄〜閉塞状態を見るためには、口(もしくは鼻)から内視鏡カメラを入れて、十二指腸乳頭部まで到達、そこから胆道(総胆管〜肝内胆管)にチューブを入れて造影します。
すると、胆道の状態がわかります。

胆道の状態を見て、
「これは詰まっているから、解放が必要だ」と判断するとドレナージといって余分な胆汁を体外へ排出する必要があります。
上の症例においても、総胆管の造影剤による描出がなく、狭窄〜閉塞していることがわかります。
EBDは、そこからさらにドレナージチューブを用いて胆汁を排泄する手技を指します。
DはDrainageのDであり、ドレナージ=余分な液体を体外へ排出することです。
では次に、ENBDとERBDについて説明します。

ENBDとは?


ENBDとは、Endoscopic nasobiliary drainageの略で、日本語にすると、内視鏡的-経鼻胆管-ドレナージとなります。

つまり、内視鏡を用いて、鼻と胆管を繋いでドレナージを行うということです。
詰まっている胆管に溜まっている胆汁をチューブ沿いに鼻から出すということです。
このように体外に出す場合、外瘻化(がいろうか)と言います。

上の患者さんに対して、実際にENBDチューブを入れたものです。
CTの冠状断像です。
総胆管内にチューブが留置され、これが十二指腸→胃→食道→咽頭を経て、鼻から排液されます。
レントゲンだと、このチューブの様子が一目瞭然です。

ERBDとは?


一方で、ERBDとは、Endoscopic retrograde biliary drainageの略で、日本語にすると、内視鏡的-逆行性-胆管-ドレナージとなります。
胆汁は、肝内胆管→総胆管→十二指腸乳頭→十二指腸へと排泄されていきます。
同じように結石や腫瘍によりこの経路に狭窄や閉塞を認めている場合に、この経路(総胆管と十二指腸を結ぶ)にチューブを置いて、胆汁の流れを維持するようにする方法です。

ENBDはチューブの先端が鼻(体外)ですが、ERBDは、十二指腸(体内)に先端があります。
この置くチューブは、プラスチック製の柔らかいチューブや金属ステントが留置されます。
このようにドレナージの先が体内である場合、内瘻化(ないろうか)と言います。

ENBDとERBDの適応は?

PTCDと同様で、

  • 閉塞性黄疸の減黄(胆汁を外に出す)
  • 急性閉塞性可能性胆管炎の治療

が適応となります。

ENBDとERBDの合併症は?

早期合併症と長期留置に伴う合併症に分けられます。

早期合併症

ERBDによる内瘻化を行った場合、胆管の開口部である十二指腸の乳頭を切開(EST:endoscopic sphincterotomy)することがあります。
切開により出血や十二指腸に穴があく穿孔(せんこう)、さらには腹膜炎を起こすことがあります。
また切開した部位が反応性に浮腫を起こしたり、留置したチューブにより膵管の開口部が圧迫されることがあります。
すると膵液が排泄されなくなり、(閉塞性の)膵炎を起こすことがあります。

長期留置に伴う合併症

  • チューブの狭窄〜閉塞
  • チューブの逸脱
  • チューブの胆管内迷入
  • 逆行性胆管炎
  • 内瘻化チューブや金属ステントの十二指腸壁圧迫・接触による出血

チューブが詰まってくることがあり、それにより狭窄や閉塞をきたすことがあります。
そうなると胆汁を再び排出することができず、閉塞性黄疸となったり、感染を起こして胆管炎を併発することがあります。
これらの合併症は術後早期にも起こることがあります。
ドレナージ不良による胆管炎を起こすような場合は、次の手として、PTCDなどを考慮します。

ENBDとERBDの看護のポイントは?

看護のポイントは主に術中と術後の管理に分けられます。

術中の看護のポイント

術中では、内視鏡を用いるため、体位を保持したり、体位変換が重要となります。
また、乳頭を切開(EST:endoscopic sphincterotomy)した場合に起こりうる出血や稀ですが、十二指腸に穴が開く穿孔(せんこう)に注意して注意深く患者さんの様子を観察することが重要です。
さらに、ENBDの場合は鼻にチューブをしっかり固定することが重要です。

術後の看護のポイント

術中と同様に、出血、穿孔、腹膜炎を疑うようなバイタルサインや症状がないかを注意深く観察します。
また、ENBDの場合は鼻に入ったチューブからの排液の性状や量をチェックします。
また、閉塞性黄疸が改善されたか黄疸の様子を観察します。

まとめ

ENBDとERBD、名前が似ていてややこしいですが、結局やっていることは、内視鏡を使った胆汁のドレナージということで、それを鼻から行うか、十二指腸に行うかの違いだけです。

内視鏡的胆道ドレナージ術(EBD)
  • ENBD:Endoscopic nasobiliary drainageの略。内視鏡的-経鼻胆管-ドレナージ。鼻から胆汁を出す
  • ERBD:Endoscopic retrograde biliary drainageの略。内視鏡的-逆行性-胆管-ドレナージ。十二指腸から胆汁を出す

ENBDのNはnaso-のNでしたね。このnaso-は鼻ということですので、結局nose=鼻からきているですね。
ですので、鼻から排液を出す方が、ENBDと覚えておきましょう。
一番良いのは、これらの略語が何の略語か英語がスラスラ出てくることです。
内視鏡に従事する人は、覚えておいて損はありませんね。]]>

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