誤嚥性肺炎とは文字どおり、主に高齢者の誤嚥により起こる肺炎であり、異物が下気道に入ることによって起こります。実は誤嚥性肺炎にはよくあるタイプのものだけではなく、

  • びまん性誤嚥性細気管支炎
  • Mendelson症候群
  • 人工呼吸器関連肺炎

と言ったものも含まれます。

今回は、誤嚥性肺炎について原因から症状、画像診断、治療までまとめました。

Sponsored Link

誤嚥性肺炎の原因菌(起因菌)は?

0-63

医師
高齢者における誤嚥性肺炎の原因菌(起因菌)は以下の通りです。
  • 腸内細菌:クレブシエラ、プロテウス、セラチア、大腸菌
  • 黄色ブドウ球菌
  • 肺炎球菌
  • 肺炎桿菌
  • 嫌気性菌
  • インフルエンザ菌 など

Sponsored Link

誤嚥性肺炎の種類は?

大きく、3種類の病態があります。

  • 口腔咽頭の微生物や内容物が肺に入って感染が起こる。
    • 誤嚥性肺炎(通常型)
    • びまん性誤嚥性細気管支炎
  • 胃内容物が肺に入って炎症が起こる(Mendelson症候群)。
  • 人工呼吸器が関連する肺炎(人工呼吸器関連肺炎)

びまん性誤嚥性細気管支炎(慢性嚥下性細気管支炎)とは?

口腔咽頭の微生物や内容物を誤嚥する一般的な誤嚥性肺炎の他に、慢性の神経疾患などで長期寝たきりの場合、比較的少量の口腔内容物を持続的に誤嚥する結果、肺にびまん性に粒状影を認めることがあります。

この病態をびまん性誤嚥性細気管支炎(慢性嚥下性細気管支炎)と呼びます。

びまん性誤嚥性細気管支炎(慢性嚥下性細気管支炎)の診断のポイント
  • 病歴が重要:アカラシア、咽頭癌、食道癌、胃全摘後、神経疾患がある。
  • 過膨張を認めることは少ない。
  • 下方優位の分布。
  • 小葉中心性の分枝状結節
    (臨床放射線1996;41:129-133)

Mendelson症候群とは?

PHの低い胃酸の誤嚥によって引き起こされる化学的肺炎であり、最も重篤と言われます。

急性肺障害(ALI)/急性呼吸促迫症候群(ARDS:acute respiratory distress syndrome)が主体となり、画像上もこれらに類似する強い所見となります。

人工呼吸器関連肺炎(VAP:ventilator-associated pneumonia)とは?

気管切開や人工呼吸器装着後の48時間以降に新たに発生した肺炎を人工呼吸器関連肺炎と呼びます。装置のチューブに沿って口腔咽頭の菌が肺へ侵入することで起こると考えられています。

誤嚥性肺炎の症状は?

誤嚥性肺炎の症状にはどのようなものがありますか?
医師
誤嚥した内容物によっても異なります。

特に胃酸の誤嚥の場合は、化学的肺炎を起こして非常に重症化することがあり、人工呼吸器が必要にあることがあります。

高齢者の嚥下困難、食事の誤嚥、夜間の不顕性誤嚥などによる気道刺激の結果、症状としては

が多いとされています。その他、

  • 頻呼吸
  • 喀痰
  • 発熱

などが挙げられます。

0-40

どんな人が誤嚥性肺炎を起こしやすいか?

誤嚥性肺炎を起こしやすい人はどんな人ですか?
医師
以下に列挙します。

誤嚥のリスクがある人は、

  • 長期臥床
  • アルコールや覚せい剤などの薬物中毒
  • 麻酔後
  • 頭部外傷後
  • 精神遅滞・認知障害
  • パーキンソン病
  • けいれん性疾患
  • 脳血管障害
  • 気管切開後
  • 経鼻胃管挿入
  • 胃食道疾患:胃食道接合部の弛緩がある場合、胃内圧や容積の上昇がある場合。
  • 神経筋疾患があり声門の閉鎖ができない場合。

 

誤嚥性肺炎の好発部位は?

a lobe of the lung4

臥位で最も影響を受けやすいとされる

  • 上葉背側
  • 下葉の上区域
  • 肺底部の背側

といった肺の荷重部位(dependent portion)に起こりやすいのが特徴です。

しばしば両側に起こりますが、片側に起こることもあります。片側の場合は右に多いとされています。

関連記事)肺葉及び肺区域の解剖は?胸部CTやレントゲン読影の基礎!

誤嚥性肺炎の画像所見は?

CTでは上記の好発部位に背側に優位に気管支を中心とした浸潤影(肺胞性陰影)を認めるのが特徴です。この荷重部位に起こる点で、通常の細菌性肺炎と鑑別できることがあります。

症例 80歳代男性

aspiration pneumonia

両下葉に浸潤影あり。右上葉には小葉中心性の粒状影あり。誤嚥性肺炎を疑う所見。診断:誤嚥性肺炎。この症例のCT画像を実際に見てみる→誤嚥性肺炎のCT画像所見
症例 70歳代 男性

aspiration pneumonia1

CT所見:右上下葉に広範な浸潤影あり。気管支には上葉及び下葉ともに残渣あり。診断:誤嚥性肺炎。この症例のCT画像を実際に見てみる→誤嚥性肺炎のCT画像所見

ただし、特殊なタイプである2つは以下の分布を示します。

  • びまん性誤嚥性細気管支炎:小葉中心性の粒状影(びまん性汎細気管支炎(DPB:diffuse panbronchiolitis))に類似する)
  • Mendelson症候群:ALI/ARDSに類似した後半な浸潤影〜すりガラス影
症例 70歳代男性

mendelson syndrome

CT所見:胃がんの癌性腹膜炎治療中。胃液の誤嚥あり。両下葉及び中葉舌区に広範な浸潤影あり。Mendelson症候群と診断された。この実際のCT画像を見てみる→Mendelson症候群のCT画像所見

 

誤嚥性肺炎の治療は?

誤嚥性肺炎の治療では、抗菌薬投与が推奨されます。グラム陰性桿菌にも活性を持つセフトリアキソン(CTRX)やレボフロキサシン(LVFX)などが投与されます。

胃液の誤嚥であるMendelson症候群の場合最も大事なのは吸引することです。予防的に抗生物質やステロイドが用いられることがありますが、推奨されないとされています。

最後に

誤嚥性肺炎は高齢者に多い疾患であり、中でもリスクのある人には注意が必要です。嘔吐や食事中の咳など誤嚥の可能性を示唆するエピソードを一緒にいた家族が目撃していた場合はより診断に近づきますが、そのようなケースは40%程度だという報告もあります。

つまり、そのようなエピソードがなくてもこの病気を疑うことが診断の第一歩なのです。

 

Sponsored Link

 

関連記事はこちら