胸痛を起こす病気の中で、命に関わる非常に重篤な病気は、

  • 急性冠症候群
  • 大動脈解離
  • 肺塞栓症
  • 緊張性気胸

の4つであり、早期診断早期治療が非常に重要です。今回は、中でも

  • 胸や背部が裂けるように痛い
  • 痛みが移動するようだ。

という症状を来すことがある大動脈解離について、定義、分類、画像所見、治療法までまとめました。

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大動脈解離とは?

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大動脈解離とはどのような病気でしょうか?
医師
簡単に言うと、大動脈の動脈の壁が裂けた状態です。

大動脈は、内膜、中膜、外膜の3層からなりますが、中膜は遺伝的素因などが原因となり、他の膜と比べてやや脆い傾向にあります。

そして高血圧などが原因となり、大動脈の壁に負担がかかると、内膜及び中膜の途中で大動脈が裂けてしまうことがあります。これを大動脈解離と言います。

本来の正常な大動脈腔を真腔(true lumen)、裂けて新たにできた大動脈腔を偽腔(false lumen)と言います。

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大動脈解離とは
大動脈壁が中膜で2層に剥離し、大動脈の腔が2腔になった状態。

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大動脈解離の症状は?

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症状はどのようなものがありますか?
医師
以下のような重たい症状が起こることが多いです。
  • 突然の胸背部痛(裂けるような痛み、移動するような痛みと訴えることもある)
  • 意識障害、失神
  • 神経障害

ただし、高齢者の場合、症状に気づかないこともあるので注意が必要です。

大動脈解離の分類は?

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大動脈解離の分類は、

  • 偽腔の血流状態
  • 解離範囲
  • 発症からの病期

により分類されます。

偽腔の血流状態による分類は?

大動脈解離は、中膜の途中で大動脈壁が裂ける病気でした。そして、裂けてできた内膜と中膜の一部は、隔壁(フラップ、flap)と呼ばれます。

この隔壁(フラップ、flap)には、1~数個の内膜の亀裂(tear)が存在すると言われています。亀裂が存在すればこれを介して真腔(true lumen)と偽腔(false lumen)が交通することになりますが、この亀裂がはっきりしないこともあります。

交通する場合を、

  • 偽腔開存型大動脈解離(communicating aortic dissection)

交通しない場合を、

  • 偽腔閉鎖型大動脈解離(non-communicating aortic dissection)

と分類します。aortic dissection2

医師
偽腔に血流があるかどうかで分類します。

特殊なタイプとして、偽腔閉鎖型解離において、血栓のある偽腔へ局所的な内腔の突出を認めることがあります。これを、

  • ULP (ulcer-like projection)

と分類します。読み方は、そのままユーエルピーです。

このULPには注意が必要です。なぜならば、経過を見ていると

  • 解離腔が拡大したり、瘤化する。
  • 再度解離をする。
  • 大動脈が破裂する。

というリスクが他のタイプよりも高いとされているためです。

関連記事)PAUとULPの違いとは?

entryとは?

entry(入口部)とは、tear(亀裂)の中でも真腔から偽腔へ血流が流入する主なものを指し、initial tear、primary tearと呼ばれることもあります。

また、真腔から偽腔へ血流が再流入する場合があり、このtear(亀裂)をre-entry(再入口部)と呼びます。

aortic dissection4

解離範囲による分類は?

解離範囲による分類は2種類あります。

  • Stanford分類
  • DeBakey分類

の2種類です。それぞれ読み方はスタンフォード、ドゥベーキーです。

Stanford分類とは?

Stanford aortic dissection

Stanford分類は、上行大動脈に解離が及んでいるかどうかで、分類するわかりやすい分類です。

  • Stanford分類A型:上行大動脈に解離が及ぶ。
  • Stanford分類B型:上行大動脈に解離が及ばない。

当然心臓により近いところまで解離が及んでいるA型の方が重要であり、緊急手術の適応となります。治療方針に直結する分類であるため、救急の現場では、こちらの分類が基本的に使われます。

DeBakey分類とは?

DeBakey aortic dissection

一方でDeBakey分類は少しややこしく、解離の範囲と、entryの位置により分類します。こちらは、解離範囲を具体的に示したものであり、心臓血管外科が手術する場合や血管内治療の際に有用な分類とされます。

詳細については成書を参考ください。

病期による分類とは?

大動脈解離は命に関わる病気であり、迅速な診断及び治療が必要とされますが、高齢者が症状に気づかずに様子を見ていたり、痛みはあるけど我慢しているケースなどもあり、発症時に見つからないこともあります。

また、急性期に見つかった場合でも、解離が上行大動脈に及ばない場合は、内科的に保存的に治療されますケースが多いです。

そこで発症からどの程度時間が経過した大動脈解離なのかで病期分類します。

  • 超急性期:発症から48時間以内。
  • 急性期:発症から2週間以内。
  • 亜急性期:発症から3週目(15日)〜2ヶ月以内。
  • 慢性期:発症後2ヶ月以上経過したもの。

と、分類します。

大動脈解離ってどうやって診断する?

大動脈解離ってどうやって診断するのでしょうか?
医師
まず上に挙げた症状から、大動脈解離の可能性を疑います。

通常は、その後、診察や、採血などの初期対応に加えて、胸部レントゲン検査を撮影されます。大動脈解離の場合は、

  • 胸部レントゲンで縦隔の陰影が増強する。(縦隔が通常よりも太く見える)

という所見が見られます。

医師
症状とレントゲン所見の組み合わせでいかにこの病気を疑うかが重要です。

以下の3つ当てはまれば100%、2つ以上なら83%で大動脈解離と診断できる。

  1. 裂けるような痛み
  2. 痛みの移動
  3. 胸部X線で上縦隔拡大

ただし、この所見は大動脈解離があっても全例に見られるわけではありませんので、疑わしい場合積極的に精査が必要です。その精査が、CT検査です。

大動脈解離のCT所見は?

大動脈解離が疑われる場合は、単純CTのほか、造影剤を使った造影CTを撮像することが望まれます。

CTでは、

  • 解離腔があること(存在診断)。
  • 解離腔の形態及び進展範囲(性状診断)。
  • entry/ re-entryの同定(造影CTによる)。
  • 合併症の有無
    • 大動脈の破裂
    • 心タンポナーデ
    • 大動脈の主要分枝動脈の閉塞(及びそれによる臓器虚血)

などをチェックします。

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症例 60歳代男性 胸痛

aortic dissection

上行大動脈から、下行大動脈へとかけて、総腸骨動脈レベルまで少なくとも解離腔あり。
解離腔は腕頭動脈及び左の総頸動脈・鎖骨下動脈にも及んでいる。
このCT画像を実際に見てみる。→大動脈解離(stanford A型・偽腔開存型)

 

大動脈解離の治療は?

大動脈解離の治療は、上述のように上行大動脈に解離腔が及ぶが及ばないかで異なります。

急性期の場合、

  • StanfordA型(上行大動脈に解離腔が及ぶ)→心臓血管外科にて緊急手術。ただし以下の例外あり。
  • StanfordB型 (上行大動脈に解離腔が及ばない)→保存的に点滴などで加療。

となりますが、

発症から2週間以上経過したStanford A型の場合も、保存的に点滴などで加療されます。また、急性期であっても、偽腔閉鎖型の解離の場合は(欧米と異なり)本邦ではStanford A型に対しても内科的に加療されることがあります。

大動脈解離の治療において大事な点は、

  • 血圧コントロール(血圧を下げる)
  • 疼痛コントロール(痛みを和らげる)

という2点です。

血圧コントロールの具体的な治療薬は?

ペルジピン®持続点滴(5~15mg/時、0.5~6μg/kg/min)

※ペルジピン 1/2A の静脈注射を繰り返すという大雑把なものでもOKと言われています。

※ペルジピンの代わりに、ヘルベッサ-、ミリスロールを用いることもある。。

疼痛コントロールの具体的な治療薬は?

  1. 塩酸モルヒネ®(10mg/1ml/A) 2mg(0.2ml)静注 計5~10mg
  2. ペンタジン®0.2mg(0.5~1A) ゆっくり静注

この1もしくは2を用いて疼痛の緩和を図ります。

大動脈が解離するのではなく、コブ状に拡張するのが大動脈瘤です。大動脈瘤のまとめはこちら→大動脈瘤まとめ!症状から破裂しやすい動脈瘤、治療まで!

最後に

命に関わる非常に重要な疾患である大動脈解離についてまとめました。突然発症の、裂けるような胸の痛みというのが典型的な症状ですが、特に高齢者の場合、これらの症状が典型的に出ない場合があります。

症状が出なくても命に関わることには変わりありません。大動脈解離は、いかに早くこの病気を疑って、造影CTまでの精査ができるかが非常に重要とも言える病気です。

診断のポイントになる画像所見など中心にまとめました。ぜひ参考になれば幸いです。

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