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一般的には盲腸と呼ばれることが多い虫垂炎ですが、どのようなときに手術適応になるのでしょうか?

手術はできたら受けたくないのが普通ですよね。薬で散らせるなら散らせたいけど、手術しなかったばかりに、悪化させるのも困ります。

虫垂炎は恐ろしい病気で、悪化すると、腹膜炎から、敗血症になって命に関わることもあるからです。

よくある胃腸炎とは訳が違います。

そこで虫垂炎はどんな場合に手術の適応になるのかについてまとめてみました。


虫垂炎の手術適応は?

Woman (27)

一般女性
虫垂炎はどんなときに手術の適応になりますか?
男性医師
具体的にこういうものが揃えば手術適応という基準は実はありません

虫垂炎自体、あることが確認できれば手術となることが一般的には多いのですが、炎症所見が軽い場合や、本人が手術に否定的な場合は抗生物質で様子を見ることもあります。

抗生物質で様子をみて治ることもありますが、2割の方が虫垂炎を再発するというデータがあります。

また、抗生物質で様子を見た場合、その時点では初期の虫垂炎だったのに、1割弱の人が重症化してしまうというデータもあります。

その場合緊急手術となり、こんなことなら最初から手術をしておいたらよかったというケースです。

このように虫垂炎を手術するか、抗生物質で様子を見るかというのは非常に難しく、虫垂炎の手術の適応については、ガイドラインのような基準はなく、ケースバイケースなのですが、基本的に手術適応になるものは以下の通りです。

  • 診察上、腹膜炎が疑われる。
  • 採血上、炎症所見が強い。
  • CTで、炎症所見が強い(腹膜炎)。
  • CTで、糞石が確認される。
  • CTで、穿孔が確認される。
  • CTで、膿瘍形成が確認される。

 

このような場合には、炎症が虫垂でとどまらず、周囲へ波及していますので、腹膜炎から敗血症になって、最悪死に至る恐ろしい状態ですので、緊急手術が行われるのが一般的です。

一般女性
CTが診断に大きな役割を果たしているのでしょうか?
男性医師
その通りです。

身体診察や採血の検査で、虫垂炎が怪しい場合には、CT検査され、そこで診断がつくことが多いです。

他、超音波検査(エコー)も重宝されます。

acute appendicitis

急性虫垂炎自体についてはこちらに詳しくまとめました。→急性虫垂炎のまとめ

覚えておきたい!虫垂炎は診断が難しいことがしばしばある。

CT検査や超音波検査(エコー)が虫垂炎診断に役立つと上に記載しましたが、右下腹部痛という典型的な症状と採血で炎症反応の上昇があり、超音波検査をしたり、CTを撮影すれば、虫垂炎と診断できることが多いのであって、典型的ではないケースも多々あります。

特に、

  • 小児
  • 高齢者
  • 妊婦

の場合、症状が典型的でなかったり、症状の訴えがないこともあります。

妊婦さんの場合、妊娠により虫垂の位置が移動していることもあります。

さらに初期の虫垂炎というのは、仮に典型的であっても、診断が難しいことが多く、超音波検査やCTを撮影しても、微妙なケースも多々あります。

腹痛で病院を受診して、CTを撮影せず、「胃腸炎ですね」と言われて、その後虫垂炎が進行して腹膜炎で救急車で運ばれるというケースも少なくありません。

初期の状態では、CTを撮影する基準に達していない事も多く、また採血上も炎症反応の上昇などが軽微であることもあり、初期の段階での診断をより難しくします。
(超音波検査は被ばくの問題がありませんので、腹痛患者に行われる事が多いですが、これも同様で、初期の虫垂炎はなかなか発見ができないのが現状です。)

医療の世界では、「後医は名医」という言葉がありますが、虫垂炎の場合、進行してからの方が発見しやすいので、どうしても後から診察したほうが診断しやすいということも覚えておきましょう。

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虫垂炎の手術の方法は?

手術には大きく2種類あります。

虫垂炎のみで、周囲への炎症の波及が少ない場合は、傷口が少ない

  • 腹腔鏡下手術

をされることが多いです。

ただし、

  • 周囲への炎症波及が強い場合
  • 膿瘍形成が広範にある場合
  • もともとは腹腔鏡下で行っていた場合であっても、
    ・虫垂の炎症が強くて回盲部切除が必要(虫垂と周りの盲腸も切除が必要)な時とか
    ・術中に出血コントロールが出来なくなった時

 

などの場合には、

  • 開腹手術

が行われることもあります。どちらが行われるかは、施設の方針などや、状態によりケースバイケースです。

虫垂炎の手術後の入院期間は?

入院期間は人それぞれですので、一概には言えませんが、トラブルが無ければ

  • 腹腔鏡下での手術の場合→術後1週間有れば退院できることが多い。術後2、3日で帰れる場合もあり。

開腹手術の場合は、腹腔鏡下と比べると、傷が多くなりますし、負担も多くなりますので、当然腹腔鏡下の手術よりは入院期間は長くなります。

ちなみに、手術中の麻酔方法は、腹腔鏡下であれ、開腹手術であれ、全身麻酔で行います。

関連記事)盲腸(虫垂炎)の症状をセルフチェックしよう!

最後に

最近のCT装置は精度が増しており、虫垂炎の診断は概ねできるようになりました。

しかし、それでも難しいケースもありますし、古い装置を使っている施設や、そもそもCTがない施設では、よほど典型的でない限り、虫垂炎の診断自体が難しいこともあります。

急性虫垂炎のCT所見についてはこちらにまとめました。→急性虫垂炎のCT所見のポイント!

虫垂炎と診断された場合、基本的には手術の方向になることが多いですが、これもケースバイケースで、炎症が軽い場合は抗生物質で様子を見ることもあります。

具体的にこういうときは、手術!というガイドラインがあるわけではありません。

ただし、上に述べたケースの場合は、最悪命に関わることですので、速やかに手術の適応となります。




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