無症状で受けた人間ドックなどの腹部超音波検査(腹部エコー)や、他の病気の検査で受けたCTやMRIの検査で

「膵嚢胞(すいのうほう)があります。」
「膵頭部に膵のう胞の疑いあり

などと指摘されることがあります。

膵嚢胞とは文字通りお腹の臓器である膵臓(すいぞう)にできる嚢胞(のうほう)のことです。

ただし、肝臓にできる良性の「肝のう胞」や腎臓にできる良性の「腎のう胞」ほど頻度は多くなく、「腫瘍性」の場合もあるので注意が必要です。

そこで今回は、膵嚢胞(pancreatic cyst)について図(イラスト)や実際のCT、MRI画像を用いてまとめました。

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膵嚢胞とは?

先ほど述べたように、膵のう胞とは文字通り、膵臓に出来たのう胞のことを言います。

膵のう胞にはこれから述べるようにたくさんの種類がありますが、それらを総称して膵のう胞と呼びます。

そんな膵臓はどこにあるのか?膵臓の場所についてはこちらにまとめました。→【CT画像あり】膵臓の場所を図で解説!痛みが出るのはココ!  

 

膵嚢胞の原因は?鑑別は?

膵のう胞の原因・鑑別はまずその嚢胞が非腫瘍性病変(ひしゅようせいびょうへん)なのか腫瘍性病変(しゅようせいびょうへん)なのかに分けられます。

  • 非腫瘍性病変
  • 腫瘍性病変

それぞれについてみていきましょう。

非腫瘍性病変の膵のう胞

非腫瘍性の場合の膵のう胞は、

  • 仮性嚢胞
  • 真性嚢胞

に大きく分けられます。

膵仮性嚢胞

嚢胞の内壁が上皮を欠いている嚢胞のことを仮性嚢胞(かせいのうほう)といいます。

内壁に上皮がないので結合組織などで覆われています。

膵に発生する嚢胞の大半はこの仮性嚢胞といわれています。

膵炎や外傷後などに生じる嚢胞ですが、原因不明(特発性)の場合もあります。

内容物は膵液や壊死組織が融解した液体を含みます。

症例 70歳代女性 急性膵炎

腹部造影CTの横断像です。

左から経時的に提示しています。

膵臓は腫大し、周囲に脂肪織濃度上昇および液体貯留、腹膜の肥厚を認めています。

急性膵炎のCT画像所見です。

少し時間が経過した、右側の画像では、膵臓の腹側に巨大な液貯留を認めています。

急性膵炎後の仮性嚢胞と診断され、ドレナージ術が施行されました。

症例 70歳代男性 膵腫瘍にて膵体尾部切除後

腹部造影CTの横断像です。

左から経時的に提示しています。

手術後に残膵から連続する不整形の液体貯留を認めています。

手術後の膵仮性嚢胞と診断されました。

経時的にサイズが小さくなっているのがわかります。

膵真性嚢胞

真性嚢胞はさらに、

  • 貯留嚢胞(retention cyst)
  • 先天性嚢胞(congenital cyst)
  • リンパ上皮嚢胞(lymphoepithelial cyst)
  • 類上皮嚢胞(epidermoid cyst)
  • 類皮嚢胞(dermoid cyst)

などに分類されます。

貯留嚢胞は、膵がんや膵石により分枝膵管が閉塞することで生じる嚢胞です。
分枝膵管が閉塞するため通常、主膵管との連続性(交通)はないのですが、あることもあります。

先天性嚢胞は主膵管との交通は認めない、通常単発の類円形の嚢胞です。

リンパ上皮嚢胞、類上皮嚢胞、類皮嚢胞は嚢胞の内面が扁平上皮であるという特徴が共通しています。

リンパ上皮嚢胞は、膵臓から外に突出し、壁は厚く、石灰化を伴うことがあります。

類上皮嚢胞は副脾が膵臓に入り込んで(膵内副脾となり)嚢胞化したものですので、膵尾部に生じる嚢胞性病変です。

それぞれ特徴はありますが、スクリーニングなどのエコーに続いて、CTやMRIなどの精密検査においても鑑別ができない(このタイプの嚢胞だと予測できない)ことが多いのが現状でもあります。

腫瘍性病変の膵のう胞

腫瘍性の場合の膵のう胞には、

  • IPMN(分枝型)
  • SCN
  • MCN
  • 充実性腫瘍の嚢胞変性

などがあります。

中でも日常臨床でしばしば目にし、頻度が高いのが、IPMN(分枝型)です。

その他のSCN、MCN、充実性腫瘍の嚢胞変性の頻度はそれほど高くありません。

IPMNは、Intraductal Papillary Mucinous Neoplasmの頭文字を取ったもので、日本語では「膵管内乳頭粘液性腫瘍」という長い名称です。
(ちなみにSCNは、serous cystic neoplasmの頭文字を取ったもので、日本語では膵槳液性嚢胞腺腫で、MCNはmucinous cystic neoplasmの頭文字を取ったもので、日本語では粘液性嚢胞性腫瘍です。)

IPMNにはさらに

  • 分枝型
  • 主膵管型
  • 混合型

の3つの種類があり、膵のう胞として頻度が高いのは、分枝型のIPMNです。

分枝型のIPMNの特徴は?

IPMN分枝型の図

IPMNの日本語名によると膵管内乳頭粘液性腫瘍です。

IPMNは膵管上皮から発生する腫瘍で、乳頭状の形をし、粘液を産生する腫瘍です。

粘液を産生し、通常、主膵管と連続性のある多房性の嚢胞性病変を形成します。

症例 70歳代女性 IPMNフォロー

MRIのT2強調像の横断像です。

膵鉤部および膵頭部に多房性嚢胞性病変を認めています。

主膵管とは連続しているようにも見えます。

また、膵体尾部には、単房性嚢胞性病変が散見されます。

MRCPのMIP像です。

T2強調像と同じように、膵鉤部および膵頭部に多房性嚢胞性病変を認めています。

主膵管の拡張所見は認めておらず、分枝型のIPMNに特徴的な所見です。

膵嚢胞がわかったときの次の精密検査は?

膵のう胞は無症状でスクリーニングで受けた腹部超音波検査(腹部エコー検査)でたまたま見つかることが多く、他には他の病気の検査で受けたCTやMRIの検査でたまたま見つかることがあります。

腹部超音波検査(腹部エコー検査)で膵のう胞がたまたま見つかった場合、さらなる精密検査としては、

  • MRCP
  • 膵ダイナミックCT
  • 膵ダイナミックMRI

などがあります。

これらの検査により、のう胞や膵臓がどのような特徴を持っているのかを観察します。

具体的には、

  • 単房性なのか多房性なのか
  • 単発なのか多発なのか
  • 類円形なのか不整形なのか
  • 内容物はどのような性質か
  • 主膵管との連続性はあるのかないのか
  • 主膵管に拡張所見はあるのかないのか
  • のう胞に壁在結節や充実部位はあるのかないのか
  • 膵臓に腫瘍を疑う様な所見はあるのかないのか
  • 周りのリンパ節に腫れはないか

などです。

ただし、これらの画像検査によりある程度の鑑別はできますが、診断を確定させることは通常できません。

  • 膵炎の症状がある
  • のう胞の径が3cm以上である
  • 肥厚したあるいは増強される嚢胞壁である
  • 主膵管の大きさが5-9mmである
  • 造影はされないが壁在結節がある
  • 尾側の膵臓実質を伴う主膵管径の急峻な変化がある

というような所見があれば、悪性の可能性がある(worrisome feature)1)とし、さらに精密検査として、

  • 超音波内視鏡検査(EUS)
  • (ERCP)

などが行われ、場合によって生検や膵液の採取などが行われ病理検査を行い、診断をつけることがあります。

これらの画像検査に加えて、

  • 腫瘍マーカー(CA19-9,CEA,DUPANなど)
  • アミラーゼ
  • リパーゼ
  • 白血球、血小板
  • Ca

などの採血データを参考に、腫瘍や膵炎の可能性を検索します。

膵嚢胞の症状は?

膵嚢胞は通常無症状ですが、サイズが大きくなり周りを圧排したりすることで

  • 腹痛
  • 腹部膨満
  • 悪心・嘔吐
  • 閉塞性黄疸
  • 発熱

などの症状が起こることがあります。

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膵嚢胞の治療は?

膵炎後や膵臓の手術後などで生じた仮性嚢胞で経過観察の中で、サイズが大きくなるものは体表からのドレナージにより嚢胞内の成分を出したり、場合によっては手術により摘出することもあります。

また、他の膵のう胞で、

  • 膵頭部腫瘤を有する閉塞性黄疸がある
  • 嚢胞内の増強される充実部位がある
  • 主膵管径が10mm以上ある

場合には、悪性を示唆する所見(high risk stigmata)1)とされ、手術の適応となることがあります。

膵のう胞の経過観察は?

上に挙げたような悪性の可能性がある所見(worrisome feature)を認めないのう胞の場合、のう胞のサイズにより経過観察されます。

のう胞のサイズが

  • 10mm未満→CT、MRIで2-3年ごと
  • 10-20mm→CT、MRIで1年1回を2年
  • 20-30mm→超音波内視鏡検査を3-6ヶ月ごと

経過観察をするようにいわれています1)

この経過観察でサイズが大きくなったり、上に挙げたような悪性を疑う所見が出てきた場合は、超音波内視鏡検査や手術となることがあります。

なお、経過観察の過程でのう胞のサイズが小さくなったり、場合によっては消えてしまうこともあります。

膵のう胞が癌になる確率は?

ここまで述べてきたように一概に膵のう胞といっても、

  • 非腫瘍性病変
  • 腫瘍性病変

に大きく分けられ、膵のう胞の全体のどれだけが癌になるかはわかりません。

腫瘍性病変の中でも頻度の高い分枝型IPMNの場合、

  • 分枝型IPMNは2.7%の確率で癌化する2)
  • 分枝型IPMNの2.5-9.2%の確率で(通常型)膵癌が発生する3)

と報告されています。

これは無視できない数字であり、分枝型IPMNが疑わしい場合、定期的に経過観察(フォロー)することの重要性がわかります。

また、IPMNの中でも主膵管型や混合型ではさらに癌化の可能性が高いといわれています。

最後に

膵嚢胞についてまとめました。

  • 膵嚢胞は非腫瘍性病変か腫瘍性病変に大別される
  • 膵嚢胞で最も頻度が多いものは非腫瘍性病変である仮性嚢胞である
  • 腫瘍性病変ではIPMNの分枝型の頻度が高い
  • 膵嚢胞の精密検査には、ダイナミックCT、MRI、MRCP、EUS、ERCPなどがある
  • さらに腫瘍マーカーなどの採血データも参考にする
  • 膵嚢胞は画像検査のみで確定診断は難しい
  • 嚢胞のサイズや主膵管径などを参考に経過観察(フォロー)することが大事

といった点がポイントになります。

肝嚢胞や腎嚢胞と比較してまれといえる膵嚢胞で、フォローが大事です。

参考になれば幸いです<(_ _)>

参考文献)
1)Pancreatology 12:183-197,2012
2)Springer Japan,p19-26,2014
3)Ann Transl Med 3:286,2015

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