風邪をひくと、治すためには抗生物質を服用しないといけないと思っている人が多いですが、実は風邪の原因はほとんどウイルスです。抗生物質は細菌をやっつけるものですから、ウイルスには効きません

特に簡易キットでインフルエンザと診断された場合などは、抗インフルエンザ薬である、タミフルやリレンザ、イナビルなどがあるので、それで処方はばっちりなのですが、それでも抗生物質を欲しがる人がいるのも事実なのです。そしてそれを処方する医師がいるのも事実です。

今回は、風邪に対する抗生物質についてまとめてみました。


抗生物質を飲んだら風邪が治った!?

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抗生物質を飲んで翌日よくなったということは実際多々あります。

でも実際は抗生物質のおかげではなく、自然治癒でよくなったケースがほとんどなのです。それを、抗生物質で良くなったと思い込む人が多いのです。

医者側の本音では、「風邪では抗生物質を出さない。ほとんど効かない薬を飲む必要はない。」なのですが、

「あそこの病院は、風邪で受診したのに抗生物質をくれなかった」

「あそこの病院は、風邪で受診するといつも親切に抗生物質をくれる」

と、抗生物質をくれる医者があたかも、親切で患者さん想いであると、世間一般は評価する風潮があります。

本音は効かないと思いながらも、建前で抗生物質を処方する医者が多いのも事実です。

「先生、しんどいんです。よく効く抗生物質出して!」

「こないだの抗生物質、よく効いたので、あれまた出して!」と言われたところに、

「いいですか、風邪の原因のほとんどはウイルスであり、抗生物質が効かないので・・・」とは言えない医師も多いのですね。

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本当に抗生物質が必要な風邪もある。

本当に抗生物質が必要な風邪、それは抗生物質が効くレアな風邪です。つまり、細菌が原因の風邪です。細菌が原因なのか、ウイルスが原因なのかはどうやって見極めればいいのでしょうか?

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身体所見から細菌が原因の風邪と診断する。

ウイルスによる咽頭炎なのか、細菌による咽頭炎なのかを見極めるポイントがいくつかあり、それらをまとめたものをセンターの診断基準(Centor criteria)といいます。

  1. がある。
  2. 咳がない
  3. 触ると痛みを伴う前頸部リンパ節の腫れがある。
  4. 扁桃腺に白苔がある。(口を開けて診察すると、扁桃腺に白い苔のようなものがついています。)

この4つに当てはまるものが多いほどより、細菌である溶連菌感染による咽頭炎の可能性が高く、抗生物質が処方されることが多いのです。

青い鼻水には抗生物質が必要!?

ちなみに、青い鼻水(あおっぱな)と、水様性の鼻水(みずっぱな)ですと、青い鼻水、つまり膿性鼻汁の方がより細菌が原因だと思われがちですが、急性の膿性鼻汁がある風邪の患者に抗生剤を処方して効果があったかどうかを調べて結果、処方しなかった群と比べて有意な差がなかったという報告があります。

一方で、抗生物質を出すことによる副作用(下痢、発疹、嘔気など)は、出さなかった場合の2-3倍見られることがわかっています。

これからわかることは、意外にも膿性鼻汁に対しての抗生物質の投与は、効果はなかったが、有意な副作用はあったということ、つまり、有害でしかなかったということです。

実際に細菌がいるかを確かめる!

痰を出してもらってそれをグラム染色して、細菌がいるということを確かめて、それに合う抗生物質を処方するという方法です。

でもこれは、時間も手間もかかりますし、日常の診療においてはなかなか現実的ではありません。

そもそもそれって本当に風邪?

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風邪症候群、いわゆる風邪と一般的に言われるものは、「せき、はな、のど」の症状をいずれも含むものです。そして、自然に治ってはじめて風邪であったということができるものです。

風邪のように見えて、実は風邪ではなく、別の病気が隠れていることも稀ですがあります。

そういったものは抗生物質や他の治療が必要なこともあります。

髄膜炎、副鼻腔炎、肺炎、腎盂腎炎、中耳炎、肝炎、心筋炎、敗血症、蜂窩織炎・・・とたくさんの病気が風邪のような症状を起こすことがあるので、普段の風邪と少し違うなと思えば、何が違うのかなどを具体的に医師に説明することが早期発見には重要です。

予防的に抗生物質?

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「ほとんどの風邪はウイルスが原因であり、抗生物質が効かないのはわかりました。でも、風邪が引き金となり、より怖い肺炎になる可能性もあるのでは?その予防に抗生物質が欲しいです。」

これについては一理あります。

  • 高齢者
  • 慢性肺障害
  • 喘息

などが、ベースにある場合、細菌による肺炎に移行する確率が、基礎疾患のない若い人にくらべて高いのも事実です。この場合は予防的に抗生物質を貰うというのはよいかもしれません。

喘息については、喘息と診断されていないけども、実は喘息で隠れていることもあります。明け方の咳や呼吸困難、夜中に咳で目がさめる、風邪のたびに咳が長引く、運動後に咳き込む、喘息の既往歴、家族歴などがある人は喘息の可能性があり、積極的にそのことを医師に伝えるようにしましょう。

最後に

風邪に対する抗生物質が本当に効果的であったのは25人に1人と言われます。それ以上に、副作用や耐性菌を作るというデメリットが多いのが現実です。

問診・診察をしっかりと行った上で、肺炎合併などのリスクが高い場合には出した方がいいとも言えます。

しかし、医療は医師と患者さんとのやりとりであり、効かないと思いながらも、時に、強く抗生物質を希望される場合には出すこともあるのも、また現実なんですね。




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