肝臓の治療などに携わると、bilomaという言葉を聞いたり見たりすることがあります。

bilomaは日本語では

  • 胆汁腫(たんじゅうしゅ)
  • 胆汁瘤(たんじゅうりゅう)
  • 胆汁性嚢胞(たんじゅうせいのうほう)

などと呼ばれ、読み方は「バイローマ」と読みます。

今回はこのbilomaについて、そもそもbilomaとは何なのか?、原因、診断、治療について実際のCT画像やイラストを交えながらわかりやすく解説します。

bilomaとは?

肝臓の中には胆管があり、この胆管が何らかの原因により損傷を受けることにより、胆汁が漏れ出ます。

これを胆汁漏といいます。

bilomaとは、その漏れ出た胆汁が被包化して嚢胞(腫瘤)を形成したものです。

嚢胞を形成する場所は、肝臓内の他に、肝臓外(腹腔内)でもあります。

ちなみにbileは胆汁という意味です。ですので、bilomaは胆汁+腫=胆汁腫などと日本語訳されます。

肝臓の嚢胞を見たときに考えるべき鑑別は?

肝臓の嚢胞を見たときには、以下の疾患を考える必要があります。先天性(原発性)肝嚢胞

  • peribiliary cyst
  • von Meyenburg complex
  • カロリ病(Caroli病)
  • 前腸性肝嚢胞(ciliated hepatic foregut cyst)
  • 続発性嚢胞(bilomaなど)

ただし、ほとんどは原発性の肝嚢胞で、フォローの必要もないものです。

腹部に生じうる液体貯留は?

  • 膿瘍
  • biloma:胆汁が漏れ出て嚢胞を作ったもの
  • urinoma(尿嚢腫):尿が漏れ出て嚢胞を作ったもの
  • lymphocele(リンパ嚢腫):リンパ液が漏れ出て嚢胞を作ったもの
  • 膵仮性嚢胞:膵液が漏れ出て嚢胞を作ったもの

これらは吸収されることもありますが、皮膚から針を刺して液貯留を外に排泄するドレナージ術が必要になることがあります。

特に膿瘍を始め、これらの液体貯留に感染を伴っている場合は、ドレナージ術の適応となります。

bilomaの原因は?

胆管が損傷することで胆汁が漏れ出ます。

ですので、bilomaの原因としては、

  • 肝梗塞
  • 肝外傷
  • 肝胆道系手術:腹腔鏡下胆嚢摘出後、肝部分切除後など
  • Interventional radiology(IVR):TACE、PTCD、PEITなど
  • 胆管炎
  • その他、胆管障害を来しうる病態

が挙げられます。

TACE後の合併症としてbilomaが多い理由は?

bilomaは、肝臓癌(肝細胞癌)のカテーテルによる治療であるTACEに起こる合併症として多いとされます。

その理由として、肝臓は主に門脈>動脈から二重の栄養を得ているのに対して、胆管は胆管周囲動脈叢(PCP:peribiliary capillary plexus)からのみ栄養を受けているため、動脈を詰めるTACE後に起こりやすいのです。

bilomaの診断は?

bilomaの診断には、画像診断が必要となります。

  • 腹部超音波検査(腹部エコー)
  • 腹部CT、MRI
  • 肝胆道シンチグラフィ

といった検査で診断されます。

腹部エコー

円形または卵形の嚢胞状構造として描出され、手術部位や損傷部位の付近に認めれます。

腹部CT、MRI

エコーと同様に、胆管の損傷を伴う部位に嚢胞性病変として描出されます。

内部は胆汁ですので、腹部CTでは肝嚢胞と同じような低吸収嚢胞として、MRIではT2強調像で胆汁と同値江戸の高信号となります。

ただし、膿瘍を形成している場合、造影CTやMRIで辺縁の被膜に造影効果を伴ったり、MRIの拡散強調像(DWI)で異常な高信号を示すこともあります。

症例 60歳代男性 膵癌、多発肝転移のフォロー。総胆管にステント留置あり。

肝内に多数の嚢胞性病変の出現あり(過去画像非提示)

多発bilomaを疑う所見です。壁に造影効果を認めており、嚢胞内部にairを認めるものもあり、感染が示唆される所見です。

肝胆道シンチグラフィ

核医学検査の一つであり、胆汁漏やbilomaを疑う場合に行われることがあります。

胆汁の動態を経時的に観察することができますので、胆汁が腹腔内に漏れ出る様子や肝臓内に貯留される様子を見ることができ、診断に結びつけます。

bilomaの治療は?

感染の合併がなければ抗生剤投与により保存的に治療が可能ですが、感染を合併すれば抗生剤投与をするとともにドレナージ術が必要となります。

基本的にはエコーガイド下に経皮的にbilomaに到達してドレナージチューブを留置します。

最後に

胆管損傷によって、生じることがあるbilomaについてまとめました。

胆汁は、通常エコーやCTやMRIで特別な信号を示すわけではないので、漿液性の液体貯留と鑑別がつかないことが多いのですが、経過をフォローしていても、消えない液体貯留を見たときには胆汁漏とともにbilomaを疑う必要があります。

特に右側横隔膜下の液体貯留の原因は多彩ですが、肝切除後や医原性の胆道損傷によるbilomaの頻度が多いといわれています。

まずは疑うことが、診断につながる病態です。

参考になれば幸いです。

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