頭部外傷などによって頭蓋骨を骨折すると、気脳症(きのうしょう)となってしまうことがあります。
今回は、そんな気脳症(きのうしょう、英語表記で「pneumocephalus」)について

  • 症状
  • 原因
  • 診断
  • 治療法

をイラストと実際のCT画像を交えて、徹底的にまとめました。
是非参考にしてください。

気脳症とは?

気脳症とは頭蓋内である

  • 硬膜外
  • 硬膜下
  • くも膜下
  • 脳実質内

などに空気が貯留した状態のことをいいます。
これらは、本来空気が入らない(存在しない)部位です。
頭蓋底の骨折により、髄液漏などが原因となりそこに空洞が出来、外との交通が出来るために起こります。
イラストで見ると、このように骨折部位から空気が入る状態です。

気脳症の症状は?

無症状のことがほとんどです。
しかし、以下のような症状が現れることもあります。

  • 脳圧迫症状(頭蓋内圧亢進症状)
  • 脳ヘルニア
  • 髄液漏による症状

空気により脳が圧迫され、悪化すると頭蓋内圧亢進症状などが現れることもあります。
また、重篤な状態で怖いのは脳ヘルニアです。
それ以外では、気脳症の症状ではなく、髄液が漏れ出すことによって(髄液漏)症状がさまざま現れます。

気脳症の原因は?

  • 頭蓋底骨折
  • 脳腫瘍(ガス産生菌による)
  • 医原性(診察手枝・手術などによる)

外傷性気脳症の場合、頭蓋底骨折が副鼻腔や耳孔に及び、髄液が漏出すると(髄液漏)頭蓋内が陰圧となり、空気が流入(外側から入り込む)するようになるのです。
そうなると、咳やくしゃみなどによっても空気は流入します。


開頭手術後などに発生する緊張性気脳症となると、くも膜が弁となり、どんどん一方的に空気が流入し続けます。
そうなると空気により脳が圧迫され、頭蓋内圧亢進となり、重篤な場合は、脳ヘルニアを来すこともあるのです。

気脳症のCT診断診断は?

気脳症の多くは外傷によって生じるため、CTやMRIなどの画像診断が重要になりますが、空気はMRIでは捉えにくいので、メインの画像検査は頭部のCTとなります。

CT検査では、低吸収域を認めます。
また、その際、髄液漏も疑い確認することが重要です。
さらにMRIでは、頭蓋内圧亢進症になっていないかなどを確認します。

症例:60代男性(交通事故) 頭部CT

頭部CTを撮影し、急性硬膜下血腫所見を確認。
更に、骨折線や空気を認め、気脳症と診断されました。

気脳症の治療法は?

空気は自然に吸収されるため、安静にし、自然治癒を待ちます。
空気の量により回復期間は異なりますが、約1ヶ月ほどで治癒します。
その際、髄膜炎を予防するために点滴を行い、入院管理のもと、安静を徹底します。
しかし、治療が必要となる場合もあります。
流入する空気の量が多かったり、頭蓋内圧亢進症状など、自然回復が見込めない場合には治療が必要になります。
治療は髄液漏・頭蓋内圧亢進症・脳ヘルニアなど・他の疾患に合わせて異なり、その症状に合わせた治療が行われます。
参考文献:
病気がみえる vol.7:脳・神経 P445

最後に

気脳症について、ポイントをまとめます。

  • 気脳症は、頭蓋内である硬膜外、硬膜下やくも膜下、脳実質内などに空気が貯留した状態
  • 無症状のことがほとんどだが、伴う疾患による症状が現れることも
  • 頭蓋底骨折や脳腫瘍、医原性などが原因となる
  • 画像診断を行う
  • 基本的には自然回復を待つ
  • 他の疾患を伴う場合には、そちらの治療を行う

予後は、比較的問題なく過ごせることが多いものの、感染により38度以上の高熱や痙攣や意識障害などが現れた場合、脳炎を起こしている可能性もあります。
その際は、気脳症を診断した病院もしくは、気脳症だったことを伝えたうえで受診するのがよいでしょう。

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