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人間ドックや健康診断などで受けたエコー、CT、MRIといった検査で、症状がないにも関わらず、偶然、副腎腫瘍(ふくじんしゅよう)が発見されることがあります。

偶然見つかるものだから、副腎偶発腫瘍(adrenal incidentaloma)と呼ばれることもあります。

特に近年、画像検査の数が増えているため、それに伴い見つかる数も増えています。

「副腎に腫瘍が見つかった!」

となると、ちょっとびっくりしてしまいがちですが、過半数は非機能性と言って何も悪さをしないもので、治療の必要がなく経過観察でよいものです。

今回は、

  • 副腎腫瘍にはどのような種類があるのか
  • その鑑別診断はどのようにして行うのか?
  • フォロー(経過観察)の期間はどうするのか?

などについてまとめました。

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そもそも副腎ってどこにある?

副腎は肝臓や腎臓と異なり、ややマイナーなお腹の臓器と言えます。

実際の腹部のCTでの副腎の場所(正常解剖)は以下のようになります。

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両側に存在して、腎臓の上にちょこんと乗っかっているように存在するのが副腎です。右側(向かって左側)では肝臓に追いやられるように存在しているのがわかります。形は「く」の字の形を示します。

この副腎の正常の位置を動画で示しました。

副腎腫瘍の頻度は?

副腎腫瘍は思ったよりも頻度が高く、特に加齢により頻度が増加します。

剖検例では30歳以下では1%以下と少ないですが、70歳以上では7%程度に見られると報告されています。

また、腹部のCTにより偶発的に認める副腎腫瘍の頻度は0.5-5%と報告されています。

見つかる副腎腫瘍の平均サイズは3cmです。

副腎腫瘍の種類は?

医師
さてここからが本題です。

副腎腫瘍には以下のような種類があります。

  • 非機能性の副腎腺腫(最多で過半数)
  • 機能性の副腎腺腫(20%程度)
  • 褐色細胞腫(9%程度)
  • 副腎転移

副腎腺腫

最も多い副腎腫瘍はこの副腎腺腫(読み方は「ふくじんせんしゅ」)で、上に述べたように、悪さをしない(ホルモンを出さない)非機能性の副腎腺腫が中でも最多です。

  • 機能性:ホルモン出す
  • 非機能性:ホルモンを出さない

ということですので、この2つの鑑別は採血を検査して副腎ホルモンである

  • アルドステロン
  • コルチゾール
  • カテコールアミン

と言った副腎のホルモンを計測することで行うことができます。

頻度としては、コルチゾール産生腺腫が8.9%、アルドステロン産生腫瘍が4.2%と報告されています。

症例 60歳代女性

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造影CTで、左副腎に2cm大の境界明瞭な腫瘤あり。MRI検査と合わせて腺腫と診断されました。

褐色細胞腫

褐色細胞腫(読み方は「かっしょくさいぼうしゅ」)は副腎髄質のクロム親和性細胞が腫瘍になったものです。

疫学的には副腎腫瘍の9%程度を占めており、こちらもホルモンを出す機能性と出さない非機能性に分けられますが、副腎腺腫と異なり、小さい病変であっても、さらには症状がなくても、手術適応となります。

良性と悪性があり、悪性の頻度は3.5~26%と報告によりまちまちです。

症状は、カテコラミンなどのホルモンが生成されることにより生じる5Hと呼ばれる5つのHが有名です。すなわち、

  • 高血圧:Hypertension
  • 頭痛:Headache
  • 発汗過多:Hyperhydrosis
  • 高血糖:Hyperglycemia
  • 代謝亢進:Hypermetabolism

です。

症例 60 歳代の男性。高血圧と急激な糖尿病の悪化。

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2012年放射線科診断専門医試験問題52より引用。

右副腎に嚢胞変性を伴った腫瘤を認めています。MIBGシンチグラフィにおいても右副腎に集積あり。褐色細胞腫を疑う所見。

副腎転移

副腎転移というのは元々別のところに癌があり(大腸癌や胃癌、乳癌など)、その癌の加療の有無に関わらず副腎に転移した腫瘍です。

ですので、何より大事なのは既往歴の確認です。

癌の転移ですので、悪性腫瘍に分類されます。

症例 50歳代男性 肺がん多発肺内転移、リンパ節転移あり

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両側に副腎の腫大を認めており、前回のCT(非提示)よりもサイズが増大しているため、両側副腎転移と診断しました。

副腎腫瘍の鑑別は?

次に問題になるのが、これらをどのように鑑別(区別)していくかということです。

1つは各種ホルモン値を測定して、副腎腫瘍が機能性かそうでないのかをチェックすることです。

ただし、ホルモン値が正常であった場合であっても、良性とは言えないため、画像による鑑別も重要です。特に問題となるのが、

  • 副腎腺腫
  • 副腎転移

の鑑別です。(褐色細胞腫は、5つの症状や画像所見が他と異なることが多いため、診断しやすいという特徴があるからです。)

この両者の鑑別で、最も重要なことは脂肪の有無です。

なぜならば、

  • 副腎腺腫:内部に脂肪を含むことが多い。
  • 副腎転移他:内部に脂肪を含むことが少ない。

からです。

では、どのように画像検査で腫瘍の内部に脂肪が含まれていることを確認するのでしょうか?

CTによる脂肪の確認方法

CTで腫瘍の内部に脂肪を含むことを確認するには、

  • 単純CTで副腎腫瘍のCT値を測定し、その平均が10HU以下ならば脂肪の含有がある。

と考えるのが、アメリカのガイドライン(AACE/AAES guideline)にも記載がある判別方法です。ただし4cm以下の副腎腫瘍の場合です。

CT値とは?

CT値は水を基準(0:ゼロ)とした相対的な数値で、純粋な脂肪は-50~-100HUのCT値をとります。HUとはCT値の単位です。hounsfield unitの略で、読み方はハンスフィールドユニットです。

腫瘍の中に脂肪を含有することは、腫瘍の一部のROIを取り、CT値を測定します。そこで最小のCT値を見て0よりも小さければ、脂肪を含んでいると推定されます。

副腎腫瘍のガイドラインでは、最小ではなく、平均が10HU以下ならば、脂肪を含んでいると判断するということです。

どのようにCT値を測定するのか動画で見てみましょう。動画では右副腎腫瘍のCT値とともに皮下脂肪のCT値を測定してみました。

  • 右副腎腫瘍のCT値:17HU程度。>10HUなのでMRIによる精査が必要。
  • 皮下脂肪のCT値:-100HU程度であることが確認できます。

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MRIによる脂肪の確認方法

CTで脂肪の含有が推定できれば腺腫と判断することが多いのですが、CTで脂肪含有が判定できないとき(CT値の平均が10HU以上)に、MRIにより脂肪の含有が確認されることがあります。

これにはケミカルシフトMRI(chemical shift MRI)を利用します。

これはもう説明するよりも実際の画像を見た方が早いので症例を見てみましょう。

症例 60歳代 女性

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上の症例と同じ症例です。造影CTで、左副腎に2cm大の境界明瞭な腫瘤を認めています。

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上の画像で左の画像(T1強調像、in phase)と右の画像(T1強調像、opposed phase)を見比べると、右の方が黒いのがわかります。

症例 70歳代 男性

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上の症例と同じように、画像で左の画像(T1強調像、in phase)と右の画像(T1強調像、opposed phase)を見比べると、右の方が黒いのがわかります。

これを「in phaseからopposed phaseにかけて信号が低下した」と表現して、このように信号が低下してより黒くなることは脂肪の含有を意味するのです。

脂肪が含まれていない場合や微量の場合は、右と左で内部の黒に差がないということになります。

シンチグラフィ

さらに、悪性腫瘍の既往があってより診断を確実にしたい(転移の可能性を減らしたい)場合にシンチグラフィが撮影されることがあります。アドステロールシンチグラフィと呼ばれるもので、

副腎腺腫の場合は、副腎への集積が増える(集積亢進)ので、それを確認することで転移の可能性をより下げることができます。

症例 50 歳代の女性。左足底部悪性黒色腫。

内分泌学的異常は見られない。131I アドステロールによる副腎シンチグラフィ。

131i-adsterol

2008年放射線科診断専門医試験問題75より引用

右副腎に131Iアドステロールの集積を認めています。右副腎腺腫を疑う所見です。

副腎腺腫を診断する上での注意点は?

副腎腺腫の中には、副腎皮質ホルモンを産生する機能性腺腫があることはすでに述べました。

注意点としては、中でもアルドステロン産生するもの(原発性アルドステロン症)は腺腫があるのに、画像で見えないほど小さいということがある点です。

これが何を意味するかというと、

  • アルドステロンの値が高値である。
  • 右の副腎に腫瘍がある。

からといって、右の原発性アルドステロン症とは診断できないということです。

左に見えない腺腫が存在するからかもしれないからです。この場合、右側の機能性副腎腺腫と診断して、右の副腎を摘出しても、犯人 (アルドステロン産生腺腫)は左にあり、手術をしても症状やアルドステロン値が変わらないことがあるということです。

どちらの副腎がアルドステロン産生しているのかを調べるには、副腎静脈サンプリングという、カテーテル検査が必要となります。

副腎腺腫のフォローは?

副腎腺腫と画像で判断した後、その副腎腺腫がホルモンを産生する機能的なものか、そうでないかを判断するために上で述べたように、

  • アルドステロン
  • コルチゾール
  • カテコールアミン

と言った副腎ホルモンの測定を行い、

  • 1mgデキサメサゾン負荷試験

を行います。

副腎腺腫の治療は?フォロー(経過観察)は?

ホルモン産生がある場合は、基本的にサイズに関係なく、副腎腫瘤を摘出する手術が行われることがあります。

ホルモン産生がない場合は、

  • 初回は3-6か月後に単純CTでフォロー。
  • その後1-2年ごとに、合計5年間単純CTでフォロー。

という流れです。もちろんサイズが大きくなった場合は、手術が考慮されます。

ホルモン産生がない場合であっても、サイズが4cm以上と大きなものは、副腎に発生した癌(副腎癌)の可能性があるため、基本的には手術が推奨されています。

また、サイズが大きいものは副腎転移の可能性もあるため、既往歴の確認を行い、悪性腫瘍の既往歴がある場合は、PET-CTや生検による精査が推奨されています。

最後に

副腎腫瘤の多くは、無症状で、人間ドックや健康診断での画像検査で偶然発見される副腎腺腫ですが、中にはホルモンを産生する機能性のものもあり、注意が必要です。

また、悪性腫瘍の既往があれば転移の可能性もありますし、非常にまれではありますが、副腎癌の可能性もあります。

腺腫の診断には、画像検査で脂肪の有無を同定することが非常に重要であり、

ホルモン産生していない腺腫の場合、

  • 1-4cmの場合は、合計5年間のフォロー
  • 4cm以上の場合は、基本的に手術

が推奨されています。

 

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