人間ドックや健康診断など、腹部エコーや腹部CT検査を受けた際に

「膵臓に石灰化を認めています。」

と記載されることがあります。この石灰化はどのような意味があるのでしょうか?

膵臓に石灰化があると慢性膵炎であると聞いたことがありますが本当でしょうか?
医師
多くはそうですが、必ずしもそうとは限りません。

今回は

  • 膵臓の石灰化の臨床的意義
  • どのような場合に慢性膵炎と診断されるのか
  • 慢性膵炎以外で石灰化するのはどのような時か
  • 何科を受診するべきなのか

など、膵臓の石灰化についてイラストと実際のCT画像を用いてわかりやすくまとめました。

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慢性膵炎の診断基準は?

膵臓は下のイラストのように膵臓実質(頭部、鉤部、体部、尾部からなる)と膵管を画像で確認することができます。

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慢性膵炎の確定診断は?

日本膵臓学会、日本消化器学会による慢性膵炎臨床診断基準によると、慢性膵炎の診断基準は、

画像上、

  • 主膵管内に結石を認める場合

あるいは、

  • 膵臓全体にびまん性の石灰化を認める場合

であり、この場合、慢性膵炎の確定診断となります。

これをイラストで表すと、以下のようになります。

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これは腹部エコーや腹部CTで捉えられる所見です。特にCTは石灰化に強く、小さな膵臓の石灰化であっても捉えることができます。

症例 70歳代 男性  腹部単純CT

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主膵管に石灰化(膵石)を認めています。より尾側の主膵管は拡張し、膵臓は萎縮しています。

医師
主膵管に石灰化を認めているので、これだけで慢性膵炎と診断できます。
症例 70歳代 女性 腹部造影CT

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この症例も同様に、膵頭部にて主膵管に石灰化(膵石)を認めています。より尾側の主膵管は拡張し、膵臓は萎縮しています。

これも慢性膵炎と確定診断できるということですね。
症例 50歳代 男性

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膵臓にびまん性に石灰化を認めています。一部膵管内に石灰化を認めているかもしれませんが、主膵管の石灰化の有無に関わらず、びまん性に石灰化を認めていますので、これも慢性膵炎と診断することができます。

症例 60歳代 男性 腹部単純CT

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膵臓にびまん性に石灰化を認めています。一部膵管内に石灰化を認めており、これらから慢性膵炎と診断できます。

医師
このように、

  • 主膵管内に結石を認める
  • 膵臓全体にびまん性の石灰化を認める

点に着目して、いずれかの所見があれば、慢性膵炎と確定診断できます。

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逆に言えば、上のイラストのように膵臓の辺縁や実質でも局在的な石灰化しかない場合は、慢性膵炎とは確定診断できないということになります。

症例 50歳代 男性 腹部造影CT

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膵尾部に1箇所石灰化を認めています。膵頭部にも小さな石灰化を認めていますが、びまん性とは言えず、これだけでは慢性膵炎と確定診断することはできません。

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慢性膵炎の準確定診断は?

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  • 「CTにおいて主膵管の不規則なびまん性の拡張とともに不規則な凹凸を示す膵臓の明らかな変形」

を認める場合は、慢性膵炎の確定診断所見となります。

膵臓に石灰化を認めた場合どのようにフォローすればいい?

膵臓に石灰化を認めた場合、96%で慢性膵炎と診断されます(臨床内科13:631-636,1998)が、加齢によって石灰化を生じることもあります。

上記のように、主膵管内に結石を認める場合や膵臓全体にびまん性の石灰化を認める場合は、画像だけで慢性膵炎と確定診断されますので、消化器内科を受診して、加療していくことになります。

一方で、局所的に石灰化を認める場合は、以下のように分けられます。

  • 主膵管の拡張や膵臓に変形を認める場合。
  • 主膵管の拡張や膵臓に変形を認めない場合。

主膵管の拡張や膵臓に変形を認める場合

この場合は、診断基準によると、慢性膵炎の確定診断所見となりますので、確定診断同様に消化器内科の受診が勧められます。

主膵管の拡張や膵臓に変形を認めない場合

膵臓の局所的な石灰化は、慢性膵炎によるもの以外に、加齢による変化の可能性があります。

加齢による変化の場合は治療の必要はありませんので、経過観察となります。

この場合の判断で、大事なのは

  • 上腹部痛などの症状の有無
  • 膵臓の酵素の異常の有無

となります。

いずれかがある場合は、消化器内科を受診して慢性膵炎としてフォローしていくことになります。

加齢による膵臓の石灰化ってどれくらいあるの?

  • 70歳代:4.2%
  • 80歳代:7.7%
  • 90歳代:16.7%

で慢性膵炎を伴なわない膵臓の石灰化を認めると報告されています(病理と臨床10:548-556,1992)。

ですので、膵臓の石灰化が必ずしも慢性膵炎ではないことがわかります。

ただし、90歳代でも16%程度ですので、若い人の場合はより慢性膵炎の可能性が高くなると言えます。

最後に

膵臓の石灰化は慢性膵炎を示唆する可能性が高い所見と言えますが、加齢性変化の可能性もありますので、確定診断や準確定診断所見がない場合は、上腹部痛の症状や、膵臓の酵素の上昇といった臨床所見とあわせて診断することが重要です。

慢性膵炎は一旦進行すると元に戻らない非可逆性の病態とされ、早期発見が重要とされる病気の一つです。

最近提唱されている早期慢性膵炎の診断基準には石灰化の項目はありません。これは膵臓の石灰化が慢性膵炎がある程度進行してから見られる所見であることを意味し、慢性膵炎の中期以降に見られるとされています。

石灰化が起こる前に慢性膵炎の可能性を推測することが重要と言えます。

参考文献)画像診断vol.36 No.9 2016 P884-885

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