人間ドックや健康診断などで胸部CTを撮影された時に、前縦隔に腫瘤性病変・結節陰影が見つかることがあります。多くは無症状であり、偶然見つかるものです。

前縦隔に発生する腫瘤には様々な種類があり、中には悪性のものもあります。

どのように鑑別診断を考え、再検査を行うフォロー(経過観察)の期間などはどのようにすればいいのでしょうか?

今回は、前縦隔腫瘤の鑑別診断、経過観察についてまとめました。

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前縦隔腫瘤はまず嚢胞か否かをチェックする

まず前縦隔とは、気管前面から心臓後面で形成される線より腹側であり、人を横から見たイラストで表すとこのようになります。

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胸部CT検査は輪切りで撮影されますので、前縦隔腫瘤は心臓や大動脈の前に腫瘤として認められることになります。

胸部CT検査で、偶発的に前縦隔腫瘤を認めた場合は、その腫瘤が嚢胞性病変なのかそれとも充実性病変なのかをまずチェックします。

嚢胞性病変のCT画像所見の特徴

嚢胞性病変の特徴は

  • 境界明瞭
  • 円形・卵形
  • 内部均一(CTでは低吸収域)

であることです。

嚢胞性病変は中身は嚢胞であり水が入っています。ですので、中身は均一で内部のCT値を測ると、水と同程度0-10HUを示すことが多いですが、これ以上になることもあります。内部の蛋白濃度に左右されるためです。

人間ドックや健康診断で造影胸部CTが撮影されることはほぼないので、精査やフォローの段階で造影CTを撮影した場合、一般的に嚢胞性病変は染まらない(造影前後でCT値が上昇しない)のでそれで嚢胞性病変をより疑うことはできます。

ただし、嚢胞が小さい場合はその判断も困難なことがあります。

症例 50歳代 女性 スクリーニングCT

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単純CTで前縦隔に境界明瞭で卵形の嚢胞性病変を認めています。

嚢胞性病変のMRI画像所見の特徴

胸部のMRIが人間ドックや健康診断で撮影されることはまずありません。

胸部CTで偶発的に前縦隔腫瘤が見つかった場合、その性状を精査する目的でMRIが撮影されることがあります。そのとき嚢胞性病変であれば、

  • T1強調像で低信号
  • T2強調像で明瞭な高信号

を示すことが多いです。ただしCTと同じように内部の蛋白濃度によりT1強調像で等信号〜高信号を示すこともあります。

症例 50歳代 女性 胸部MRI 上のCTと同一症例

anterior-mediastinal-tumor-mri-findings

MRIでは前縦隔腫瘤はT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示しており、嚢胞性病変であることがわかります。壁在結節を疑う所見は認められません。

前縦隔の嚢胞性病変の鑑別は?

これらの検査で嚢胞性病変が疑わしいと判断された場合、次にチェックするべきポイントは、その嚢胞性病変に壁在結節があるかどうかということです。

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壁在結節とはこのように嚢胞の壁の一部に出っ張りを示す充実構造があるものです。これがあると悪性の可能性があります。

壁在結節がない場合
  • 心膜嚢胞
  • 胸腺嚢胞
  • (嚢胞状リンパ管腫)

が鑑別疾患に挙げられます。

この場合、厳密な経過観察のガイドラインはありませんが、多くは半年〜1年ごとに2年程度の経過観察でのCT検査やMRI検査が行われることが多いです。被曝の問題もあるので、MRIで観察されることも多いです。

サイズが大きくなってきたり、性状が変わってくるような場合は呼吸器外科で手術となることもあります。

壁在結節がある場合
  • 胸腺腫
  • 悪性リンパ腫
  • 悪性胚細胞性腫瘍

の可能性があり、充実性腫瘍と同等に扱われます。

前縦隔の充実性病変の鑑別は?

前縦隔の充実性病変の場合、悪性では、

  • 胸腺腫(非浸潤性、浸潤性)
  • 胸腺癌
  • 胸腺カルチノイド
  • 悪性リンパ腫
  • 悪性胚細胞性腫瘍

が鑑別診断として挙がります。

症例 60歳代男性 造影CT

ct-findingsthymoma

医師
造影CTで前縦隔に不均一な造影効果を有する45mm大の分葉状腫瘤を認め、手術施行。胸腺腫であった症例です。

ただし、充実性病変=悪性というわけではなく、以下のような良性病変のこともあります。

  • 胸腺過形成
  • リンパ節
  • nodular lymphoid follicullar hyperplasia

充実性病変の場合、特に周囲構造の変化、浸潤所見の有無が重要であり、不整なものの場合、悪性の可能性がより高くなります。

この場合は、呼吸器外科を受診して、生検や手術をして診断・治療の方針を決めていきます。

最後に

人間ドックや健康診断で見つかる前縦隔腫瘤の多くは、良性病変ですが、CTやMRIで典型的な良性病変!と言い切れないこともしばしばあります。

嚢胞性病変と言い切れないようなサイズの小さな結節の場合は、3-6か月ごとにフォローの画像検査が行われるのが一般的です。

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