頭部外傷によって起こる病態は

  • 局所的脳損傷である、硬膜外血腫硬膜下血腫・脳内血腫などの頭蓋内血腫と、脳挫傷
  • びまん性脳損傷である、脳震盪・びまん性脳腫脹・びまん性軸索損傷

に分類されます。

その中でも、頭部外傷により起こる病変の中で、最も頻度の高いものがびまん性軸索損傷です。

今回は、このびまん性軸索損傷(DAI:diffuse axonal injury)について

  • 症状
  • 原因
  • 画像診断
  • 治療法

をイラストや実際の画像を用いて、わかりやすくまとめました。

びまん性軸索損傷とは?

最初に述べました通り、頭部外傷によって起こるびまん性脳損傷の1つで、神経線維の軸索損傷(断裂)が起こった病態のことです。

頭部外傷が軽傷で、頭蓋の変形や頭蓋内血腫といった状態が認められないにもかかわらず、長期の意識障害がある場合、びまん性軸索損傷を疑います。

びまん性軸索損傷の症状とは?

  • 受傷直後から昏睡に陥る意識障害

このびまん性軸索損傷の場合、受傷直後から見られる意識障害が特徴で、昏睡に陥るため、逆に意識障害がない場合はこの病態とは言われません。

軽度な場合は、脳震盪(のうしんとう)です。

見た目の外傷や出血もないのに、意識低下が6時間以上見られる場合は、びまん性軸索損傷を疑いますが、この臨床から判断した段階ではびまん性脳損傷と呼ばれます。

びまん性軸索損傷の好発部位は?

 

  • 脳梁(特に体部と膨大部)
  • 大脳皮質下
  • 中脳背外側部

などに高頻度に現れることが多いものですが、

  • 海馬
  • 脳弓
  • 基底核
  • 視床 

などに見られることも時々あります。

 

びまん性軸索損傷の原因は?

  • 回転速度のかかった頭部外傷が原因
  • 脳深部にズレが生じ、脳室周囲白質や基底核部、脳梁、脳幹が損傷される

原因は、頭部外傷によるものです。

しかしその外傷の受け方が、ガクンと外部圧力を受け回転が伝わることによる衝撃(回転速度のかかった外力)で、神経繊維の断裂(軸索損傷)が起こり、広い範囲で神経連絡機能が断絶してしまう状態です。

つまりは、回転する力が加わることによって、プツンと神経が切れてしまう状態です。

その中でも1番多い原因としては、交通事故ですが、他に暴力を受けたり、スポーツ中の事故もあります。

びまん性軸索損傷の画像診断は?MRIが有用!

損傷部近傍の穿通枝が断裂することで出血を伴うのは、全体の約20%ほどです。

CTではこの出血をを検出することになりますが、出血を合併していない場合にはCTでびまん性軸索損傷と診断するのは困難です。

そのため、症状から軸索損傷を疑った場合はMRIが有効です。

MRIによるT2強調像やFLAIR像にて、長円形または円形の高信号が見られます。

長軸が軸索路に沿うのも特徴で、脳梁に病変が多いもので、そこを重点的に見ます。

出血を伴う場合はT1強調像で高信号を示しましますが、T2強調像では低信号となり、とくに微小血腫では、T2*強調像にて低信号となります。

ただ、MRIでも診断は難しいものです。

MRIで確定診断ができなかったものでも受傷後の症状から疑った場合は、びまん性軸索損傷の可能性があると考え治療をし、3日〜1週間経過し、MRIで明瞭に診断出来るようになった頃に確定診断のために再び画像検査することもあります。

では、実際の症例を一例見てみましょう。

20歳代 男性 交通事故 直後より遷延する意識障害あり。
頭部MRI

FLAIR像及び拡散強調像にて、左の放線冠に円形の異常な高信号を認めており、びまん性軸索損傷が疑われた症例です。

びまん性軸索損傷の治療法は?

  • 保存療法が一般的
  • 脳挫傷や血腫などがあればそちらの治療を

基本的には、保存療法にて神経機能の回復を待ちます

ただ、脳挫傷や血腫など重大な疾患を合併してしまっている場合には、そちらに対する治療を行います。

しかし、保存療法といっても安静だけではありません。

  • 血液供給
  • 酸素供給

脳の回復を期待し血液や酸素の供給を行います。

こうすることで、二次的脳障害予防ともなります。

ただ、回復するかどうかは意識回復するか否かです。

予後は、意識障害の時間が長ければ長いほど不良となり、高次脳機能障害をきたしやすくなります。

最後に

びまん性軸索損傷(DAI)についてまとめました。
ポイントは以下の通りです。

  • 受傷直後から昏睡に陥る意識障害
  • 外傷による回転性の衝撃で脳神経繊維が断裂することで生じる
  • MRIが有効だが、出血を伴わない場合は診断が困難
  • 3日~数週間ほど経過すると明瞭な画像所見が確認できる
  • 治療は保存療法が一般的
  • 脳挫傷や血腫などの合併を伴う場合は、そちらの治療を行う
  • 早期意識回復が予後の回復に関係する

 

ただ、回復しても高次脳機能障害が見られることもあり、人格が変わったかのような症状が現れます。

そうなると、元に戻る可能性はゼロではありませんが、戻らない可能性もあります。

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