頭部外傷を受けたことなどによって起こる脳挫傷(のうざしょう「cerebral contusion」)。

そこで今回は、そんな脳挫傷について

  • 症状
  • 診断
  • 治療法

など、イラストや実際の画像とともに徹底的にまとめました。

脳挫傷とは?

脳挫傷は、外傷により脳内部に損傷が起こる疾患で、挫傷・小出血・浮腫などをきたしたものです。

軽症なもので受傷部に点状出血を伴い、重症なものになると血腫を伴います。

点状出血については、のちほど画像所見のところで説明しますね。

この血腫は脳挫傷と一連の疾患と考えるため、血腫があるから脳挫傷なのではなく、浮腫が主体であるものを脳挫傷と呼びます。

脳挫傷の原因

脳は頭蓋骨の中にありますが、くも膜下腔という髄液の入ったプールに浮いているような状態です。

そこで頭部に外傷を受けると、脳が揺れて頭蓋骨に叩きつけられ、それにより脳挫傷が起こります。

ですので、脳挫傷には起こりやすい部位というのがあり、

  • 頭蓋内板
  • 大脳鎌
  • テント

といった骨の隆起部が好発部位となります。

具体的には

  • 前頭葉底部(下面)や前頭極
  • 側頭葉下面や先端部
  • シルビウス裂の上下の大脳皮質
  • 頭蓋陥没骨折直下の頭頂葉など頭蓋内板の凹凸の多い部分や大脳鎌
  • テントなどと接触しやすい部位

が好発部位となり多発も多いものです。

このように外傷により脳が骨に叩きつけられ、出血や浮腫を伴うものが脳挫傷です。

しかし、これらの所見が見られない場合は、脳震盪(のうしんとう)と呼ばれます。

脳震盪では、一過性に意識消失・健忘・めまい・ふらつきを認めることがありますが、脳挫傷と異なり脳震盪ではCTで異常は認められません。

脳挫傷の症状は?

脳挫傷によって起こる症状は、損傷を受けた部位や時間の経過と共に様々なものがあります。

  • 頭痛
  • 吐き気
  • 嘔吐
  • 眼底異常
  • 意識障害
  • 痙攣
  • 呼吸停止

受傷後すぐに脳内出血が起こる場合と、時間が経過して起こる場合があり、頭痛や嘔吐といった症状が出た場合はその兆候が現れたということが多くあります。

また、脳に衝撃を受けたことにより腫れ・浮腫が起きると頭蓋内圧が高くなり頭蓋内圧亢進症として、頭痛・嘔吐・吐き気などの症状が現れ、眼底にも異常が現れます。

またこれらの症状が進行してしまうと意識障害を起こし、つじつまの合わない言動異常行動が現れ、最悪の場合呼吸停止となったり、痙攣を起こし失神してしまうこともあります。

ただ、意識障害までの時間が、硬膜外血腫硬膜下血腫と異なり、時間が経過してからという点が特長です。

つまり、頭部外傷後の頭痛や吐き気、嘔吐といった症状には要注意です。

また、上記のような症状は見られなくても

  • 視力障害
  • 記憶障害
  • 学習障害
  • 性格変化
  • 運動障害
  • 麻痺

などが後々出てくることもあります。

頭部外傷は対側損傷(contrecoup injury)にも注意

そして、頭部の外傷は、損傷の受け方によって直撃損傷(coup injury 読み方はクー インジャリー)だけでなく対側損傷(contrecoup injury 読み方はコントラクー インジャリー)という反対側の脳が挫傷を受けることがあります。

これも脳が髄液内にプカプカ浮いている様子を想像すれば、衝撃を受けた頭蓋骨に叩きつけられ、今度はその反動で逆側に叩きつけられることはおわかりだと思います。

直撃損傷

打撃を受けた側の脳が損傷を受けるもので、前頭部に打撲等の外傷を受けた場合、ほとんどが前頭葉への直撃損傷です。

対側損傷

頭部に衝撃を受けたことにより、脳が移動し頭蓋腔内に陰性が生じ、対側の脳や血管が引っ張られることにより衝撃を受けるものです。

後頭部や頭頂部の場合、対側損傷として前頭葉や側頭葉先端部に見られます。

好発年齢などは関係なく、小児から高齢者まで色々な場で、さまざまな原因によって起こります。

頭部に外傷を受けてもほとんどはたんこぶ程度ですむことが多いものの、心配なほどの強烈な外傷や症状が出ている場合には早急に受診をオススメします。

脳挫傷の診断や画像所見は?

頭部CTで診断を行います。

脳実質内に低吸収域(脳浮腫)の中心に斑点状の高吸収域や血腫周囲に低吸収域を認めます。

ごま塩状の点状出血(salt &pepper)が特長として見られ、それが固まって現れることが多くあります。

受傷後すぐに症状が現れずに時間が経過して急変することもあり、検査を繰り返すことも重要です。

脳挫傷にはすでに述べたように好発部位がありますので、CTを読影するときは、それらの部位にこのごま塩状の出血を疑う所見がないかをチェックします。

MRIでは、T1強調像では病変を指摘できなかったものが、FLAIR像では見つけられなかった病変を明瞭に捉えることも出来るため、脳挫傷の診断にはMRIを撮影するなば、FLAIR像が重要です。

ただ、出血を伴う場合では、T1強調像でも見つけやすくなります。(他、T2*強調像やSWIも有効)

しかし、ある程度大きな脳挫傷になるとCTでも診断する事が出来ますし、更に明瞭に診断する場合にはT1強調像やT2強調像が有効です。

また、CTでは軽症に見えるのに意識障害が強い場合には、びまん性軸索損傷を疑います。

それでは実際のCT画像を見てみましょう。

5o歳代男性 外傷 頭部CT

右の前頭葉底部に、低吸収域の中に点状の高吸収域である(黒の中に点状の白)Salt and pepper状の脳挫傷(脳内出血)を認めます。

また、側頭極にも脳挫傷及び硬膜下血腫の合併を認めています。

5o歳代男性 作業時に脚立から転落  頭部CT

両側に、前頭葉底部及び左側頭葉に低吸収域の中に点状の高吸収域である(黒の中に点状の白)Salt and pepper状の脳挫傷(脳内出血)を認めます。

また、この症例も硬膜下血腫を一部伴っています。

さらに、このスライスでははっきりしませんが、外傷性のくも膜下出血と頭蓋骨骨折を伴っていました。

またすでに述べたように、脳挫傷は短時間で急激に進行することがありますので、フォローでCTを撮影することが重要です。

60歳代女性 交通事故 頭部CT

この症例では、受傷部と反対側に外傷性くも膜下出血を少量認めています。

4時間後のフォローCT

4時間後のフォローCTでは、遅発性に脳内出血(脳挫傷)及び周囲浮腫性変化が出現しています。

また右シルビウス裂には、くも膜下出血の出現を認めています。

また、脳挫傷は脳底部に起こりやすいのですが、非常にわかりにくこともあります。

その際は横断像だけではなく冠状断像や矢状断像もチェックしましょう。

80歳代 男性 転倒による頭部外傷
頭部CT 横断像

前頭葉脳底部に高吸収域を認めており、脳挫傷を疑いますが、骨のアーチファクトやpartial volume effectで高吸収に見えることもあるので注意が必要です。

この症例を冠状断像で見てみましょう。

頭部CT 冠状断像

冠状断像で見てみると、脳内にやはり高吸収域をみとめており、アーチファクトなどでないことがわかります。

脳挫傷の治療方法は?

保存療法・薬物療法・外科手術といった方法があり、症状に合わせた治療が行われます。

保存療法

安静にし経過観察するものですが、少量の出血ならば保存療法で対処することが多いです。

薬物療法

頭痛や嘔吐といった症状が出ていて脳浮腫を認められる場合には、脳浮腫改善薬を点滴します。

また、血腫がない場合には、頭蓋内圧亢進症に対し点滴治療を行います。

外科手術

開頭術によって血腫を取り除き、出血点を止血します。

同時に、脳浮腫を改善するため、頭蓋骨を一部外した状態で手術を終える「外減圧術」が行われることもあります。

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